太陽光エネルギーが
地球の環境を救い、未来を担う
――今後の太陽光発電について、具体的な目標はありますか。
黒川: それについては、私はもう結論を出していて、「2100年には、世界中で使われている一次エネルギー供給量の3分の1を太陽光発電で賄う」ことを目標としています。世界のエネルギーの3分の1を太陽光で作り、そのうちの半分を砂漠で行うという内容で、現在ロードマップを作成しています。
さらに、この数字を達成するうえでは、発電パネルなどのリサイクル技術も必要になってきます。ただし、これは現段階ではまだ完璧とは言えません。欧州では既に「PVサイクル」というプロジェクトによってリサイクルの研究が少しずつ進められていますが、ここでも日本は後れをとっています。
――世界の一次エネルギー供給量の3分の1というのは、何らかの数字に基づいて可能な数字ということですか。
黒川: もちろんです。ベースには、ドイツ連邦政府地球気候変動諮問委員会(WBGU)が作成した、「持続可能な社会に必要な世界のエネルギー構造」というシナリオがあります。
そこには「世界のエネルギー供給量の将来像」として、「2050年には、従来エネルギーと再生可能エネルギーが半々くらいになる」となっています。さらに50年後の「2100年には、エネルギー全体量の3分の2を太陽熱発電と太陽光発電で賄う」と書いてあります。そこから借りてきて、エネルギー全体量の3分の2のうちの半分を太陽電池でやります、と宣言するわけです。
――ちょうど約33%、3分の1になりますね。
黒川: そして、太陽電池で供給する量のそのまた半分を、砂漠で作ることを考えています。地球規模で発電するための用地としては、やはり砂漠が簡単だろうということです。
実は、人工衛星を使って、既に適切な場所も選び出しています。地形の変動が少ないところ、例えばサハラやゴビなどといった世界の6大砂漠ですね。用地として適さないのは、同じ砂漠でも地形の変わりやすい砂の砂漠、ほかには山や水面などがある場所です。それから植生が豊かな場所も、せっかくの生態系を壊してはいけないので、なるべく外すようにしています。
この先人間が生きていくためには、地球の環境をいかに壊さないようにしていくかにかかっています。選択肢は、もうそれしかないでしょう。理想的なのは、鎖国していた江戸時代の循環型社会かもしれません。そこにある生態系の中で、農業で食べていくことができるような社会です。そのときの維持可能な人口は3100万人でした。しかし現在は、ほかの国の生態系を“破壊”しながら食料を輸入して、日本の人口を支えているのが実状です。
もしも今、自分たちの生態系、自分たちの土地だけで生きていかなければならないとしたらどうするのか。当然、江戸時代のような暮らしに戻るというわけにはいきません。1億以上の人口を、持続可能なアプローチで支えていかねばなりません。それが「技術によって持続する」ということの本当の意味です。
そこで、太陽電池です。これからのエネルギーは、太陽電池で作っていきましょう。そうすれば“後退”はせずに、ちゃんと“持続”が可能となりますから。

「2100年には、世界中で使われている一次エネルギー供給量の3分の1を太陽光発電で賄うことを目標にする」と語る黒川教授
([PART6]へ続く)
1965年3月、早稲田大学第一理工学部電気工学科卒業。同年4月、通産省工業技術院電気試験所(旧・電子技術総合研究所、現・産業技術総合研究所へ統合)入所、超高圧直流送電の研究に従事。当時世界初の「10万ボルト級光ゲート高電圧サイリスタバルブ」を開発。1974年から、サンシャイン計画太陽エネルギーの研究に参加。サンシャイン本部併任、新エネルギー総合開発機構(NEDO)出向、電子技術総合研究所エネルギー情報技術研究室長を経て、1996年5月に東京農工大学工学部教授へ転任。1993年早稲田大学から工学博士授与。2004年から、国立大学法人東京農工大学大学院共生科学技術院生存科学研究拠点(21世紀COE)教授。サンシャイン計画発足以来30年余にわたって太陽光発電システムの研究に注力し、系統連系型住宅屋根上太陽光発電システム集合のコンセプトを世界に先がけて提唱するなど数多くの成果を上げた。
2008年4月より東京工業大学統合研究院 特任教授。
『太陽電池の時代』(読売新聞社・1987年電気学会著作賞受賞)
『太陽光発電システム設計ガイドブック』(オーム社・1994年)
『Energy from the Desert』(ジェームズ&ジェームズ社・Volumes I & II 2003年、2007年)など
日本太陽エネルギー学会論文賞(1994年3月)
「太陽光発電システムの統合設計ルールの確立」で1995年度オーム技術賞
PVSEC-9論文賞(1996年12月)
世界再生可能エネルギーネットワーク特別賞(2000)年
PVSEC賞(2006年)
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