日本の“敗因”は何だったのか?
太陽光発電――この言葉を知らない人はまずいないだろう。そして太陽光発電は、今や“当たり前”ともいえるほどきわめて身近で幅広く利用されている。
誰もがすぐに分かるのが電卓だろう。太陽光電池パネルが内蔵されていて、乾電池などを一切使わない電卓は、オフィスでも自宅でもお馴染みのものだ。
他にも自分の身の回りを見渡せば、太陽光発電を動力源とした機器が色々あることが分かる。例えば、太陽光発電時計(ソラーウォッチ)、デジタル機器に充電する太陽光発電パネル装置、太陽光発電パネルが組み込まれた緊急時用懐中電灯、そして太陽光発電を利用したおもちゃ……。庭を見れば太陽光発電で夜光るライト、道路には太陽光発電を使った表示板システム等々がある。
自宅の屋根に太陽光発電パネルを敷き詰め、太陽光発電で昼間の使用電力を賄うシステムを導入している人も少なくない。もちろん、企業などが自社ビルや工場の屋根に太陽光発電パネルを敷き詰め、そこで発電した電力を企業内で活用している事例は探せばかなり出てくる。
それだけ身近で、普及していると思える太陽光発電――。まさに「太陽光発電大国」といってもおかしくない。事実、太陽光発電に関しては、日本の“お家芸”だった。太陽光発電パネルの生産量でも導入量でも世界トップに躍り出ると、それ以降、独走状態で世界をリードしてきた。
ところが、その日本が2005年ころから太陽光発電の分野で陰りが出てくることになる。
国内における太陽光発電の導入件数は、kW(キロワット)あたりの装置(システム)価格の低下によって順調に増加してきたが、2005年を境に徐々に減少し始めたのだ(下の図を参照)。同様に住宅用太陽電池の国内向け出荷量も縮小に転じた。

日本国内における住宅用太陽光発電の導入件数とkWあたり装置価格の推移(出典:太陽光発電協会の資料を基にITproが作成したものを引用)
2005年以降、いったい何が起こったのか? 太陽光発電システム技術の第一人者である、東京工業大学 総合研究院の黒川浩助特任教授は次のように語る。
「普通なら2005年に行われた補助金制度が打ち切りとなって、国内市場が縮小した原因だと思われるでしょう。ですが実は、打ち切り直後は補助金なしで太陽光発電システムを購入する方もいました。補助金制度打ち切りも一因でしょうが、日本市場が縮小していったのは、メーカーが太陽光発電システムを積極的に売ることを止めてしまったからなんですよ」(黒川特任教授)。
下の図を見ていただきたい。これは、太陽電池の出荷量の推移をグラフ化したものだ。国内出荷(青色)の減少に対して、海外向け出荷量(オレンジ色)が目覚ましい伸びをみせている。
この背景としては、国内の補助金が打ち切られた2005年のタイミングに、フィード・イン・タリフ制度(※1)の強化によって欧州マーケットが急速に膨らんだ。日本のメーカーは国内販売よりも利潤の高い市場を欧州に目をつけ、国内市場の形成を怠ったというのが黒川特任教授の見方である。

日本における太陽電池出荷量推移(出典:太陽光発電協会)
※1 フィード・イン・タリフ制度(固定価格買取制度)
欧州で普及している電気の買取制度。太陽光や風力などの自然エネルギーによって発電された電力を、通常価格よりも上乗せして買い取ることを電力会社に義務付けている。財源は通常支払う電気料金単価に一定の値段を上乗せして全国民が負担する。フィード・イン・タリフ制度のある国では長期にわたり安定したコスト回収が可能になるため、大規模太陽光発電施設の建設が相次いでいる。
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