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生物多様性クレジットの取引が盛んに 経済的手法と生物多様性

「生物多様性版スターン・レビュー」と呼ばれる報告書「生態システムと生物多様性の経済」(下)が今年5月のCOP9で発表された。生物多様性の価値を経済的に見積もったものだ。OECD(経済協力開発機構)のシナリオに沿って2050年の生態系の状況を予測し、2000年から2050年の森林の損失に伴う経済的損失を年間1.35兆~3.1兆ユーロ( 230兆~ 530兆円)と算出した。世界のGDP(国内総生産)の6%に当たる。

●経済シナリオで予測した世界の生物多様性の状況

生態系の価値を経済的に算出する研究は以前からあったが、この報告書が決定的に違うのは、「G8の枠組みで作ったという点。G8各国はこの報告書を採用するという意味だ」(IUCN日本委員会の道家哲平氏)

昨年3月にドイツ・ポツダムで開かれたG8環境大臣会合で採択した「ポツダム・イニシアチブ」に従って研究がスタート。欧州委員会とドイツ政府、IUCNが共同で行い、研究リーダーにドイツ銀行取締役のパバン・スクデブ氏が任命された。予測によれば、2000年から2050年までに種の多様性は11%減少する。海洋生物の減少で、漁業は2700万人の職と 800億~1000億ドル(8.5兆~11兆円)の収入が失われるリスクがある。研究の終了は2009年末の予定。

ドイツ銀行取締役のパバン・スクデブ氏

報告書には、世界で実施あるいは研究されている生態系の経済的評価手法も紹介されている。米国の「ウエットランド・ミチゲーション・バンク(湿地の損失を緩和する保全地)」はクレジット(生物多様性の保全価値)を取引する仕組み。保全すべき湿地をあらかじめ確保し、保全活動をして成果を国から認めてもらい、クレジットを取得する。開発や農地化によって湿地の生態系を劣化させた個人や企業はここからクレジットを購入し、劣化分を相殺する。2005年9月までに公認された保全地は400以上。2006年のクレジットの取引は3億5000万ドルに達した。

米国の「生物多様性キャプ・アンド・トレード」では、「絶滅危惧種クレジット」が取引される。ある企業が絶滅の恐れのある種とその生息地に環境負荷を与えた場合、クレジットを購入して相殺するもの。2005年5月時点の市場は4000万ドル以上で、930の取引があり、絶滅危惧種の生息地4万4600haが守られた。

●マダガスカル・マソアラ国立公園の保護森林が提供する生態系サービスの価値


(第4回「企業も名古屋への秒読み始まる」に続く)

日経エコロジー(2008年9月号)
日経エコロジー(2008年9月号)より

 上記の記事「先進企業に学ぶ生物多様性(第3回)本業との融合で先行する欧州(後編)」は、『日経エコロジー』2008年9月号に掲載された特集です。なお、記事中に記載した内容については、『日経エコロジー』2008年9月号掲載時の内容となっております。
 『日経エコロジー』は環境経営やCSR(企業の社会的責任)推進体制の構築、ISO14000の導入・運用を担当される方々に向けた、月刊ビジネス誌です。
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