低炭素社会を実現する技術を探る(第7回)グリーン化学工業

化石燃料からの脱却は、自動車や発電所を多様化させるだけでなく、化学工業の原料や手法に選択肢を増やす。バイオマスを原料にして、微生物や新型触媒を組み合わせたグリーン化学工業が誕生する。
樹脂や合成繊維などの原料を石油からバイオマスに変え、製造方法も触媒などによる化学反応から微生物を利用したバイオプロセスに切り替える手法が注目を集めている。エタノールなどのバイオ燃料もその一環だが、素材産業にも波及しそうだ。石油精製を意味する「オイルリファイナリー」にならって、「バイオリファイナリー」と呼ぶ。
石油化学工業は、原料の石油が使用後にCO2を排出するだけでなく、製造工程でもエネルギーを消費する。一方のバイオリファイナリーは、原料のバイオマスはカーボンニュートラルの考え方からCO2排出量はゼロと見なせる。製造工程は微生物の代謝を利用するため、工程数が少なく高温・高圧プロセスがないため省エネだ。最終製品の品質は、石油から製造した場合と、ほぼ同等にできる。
地球環境産業技術研究機構(RITE)微生物研究グループの湯川英明グループリーダーは、「バイオリファイナリーが急速に立ち上がって来た背景には、自動車業界の危機感がある」と指摘する。「自動車メーカーは、車の樹脂をバイオマス由来に切り替えたいと本気で考えている。化学メーカーがこのニーズを敏感に感じ取り研究が一気に進んだ」(湯川グループリーダー)。実際、バイオマスから汎用樹脂のポリプロピレンを製造できれば、自動車で使用している樹脂の90%をバイオマス由来にできるという。
昨年7月には、米ダウ・ケミカルが、サトウキビを原料にしたポリエチレン工場を2011年にブラジルで操業すると発表した。世界初のバイオマス原料の汎用樹脂工場で、生産規模は年産35万tの見通しだ。国内では、昨年12月に神戸大学が「統合バイオリファイナリーセンター」を設立。神戸大学と三井化学や帝人といった企業12社の研究グループは今年5月、文部科学省から10年間で最大79億円の大型予算を獲得した。
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