低炭素社会を実現する技術を探る(第6回)半導体

半導体といえばケイ素(Si=シリコン)というイメージは、今後は過去のものになりそうだ。省エネ性を武器に、炭化ケイ素(SiC)と窒化ガリウム(GaN)が台頭。その先には究極のダイヤモンドが控えている。
半導体が使われる集積回路には大きく2つの用途がある。CPU(中央演算処理装置)など電気信号を処理するものと、インバーター(周波数制御装置)など電源回路に使われるものだ。前者と区別するため後者はパワー半導体と呼ばれている。
いずれも使用時には発熱し、エネルギーを無駄にしているが、特に電力損失が大きいのが大電流を扱うパワー半導体だ。日本の家庭では、消費電力の約8%は家電のパワー半導体による損失との試算もある。
現在の半導体材料はケイ素が主流だ。ただ、ケイ素は相対的に高電圧に弱いため、パワー半導体に使う場合は厚くして耐圧性を高める。するとその分、電気の流れる範囲が広がり、熱損失が増す。
そこで、注目されているのが、高圧に強い半導体材料だ。耐圧性能は、炭化ケイ素はケイ素の8倍、窒化ガリウムでは同10倍、究極の半導体とされるダイヤになると同30倍。単純に言えば、その分半導体素子を小さくでき、電力損失も減る。
日本中の家電や産業機械に使われるすべてのパワー半導体をこれら次世代型にすれば、数百万kW(原発数基分)の省エネになると見込まれる。
とはいえ、3候補のいずれも一筋縄ではいかない。ダイヤと炭化ケイ素は硬い物質のナンバー1とナンバー2。加工は容易でない。窒化ガリウムは結晶化すら極めて難しい。
3つのうち、現在、実用化で先頭を走っているのが、炭化ケイ素だ。
米ベンチャー企業のクリー社が既に基板の量産化に成功、それを使って一部の電機メーカーが部品を試作した。ただ、トランジスタなど高機能部品はまだ実用化されていない。
基板の量産化で、クリー社に続く位置にあるのが、新日本製鉄だ。製鉄で蓄積した高温を制御するノウハウを使い、高品質の炭化ケイ素基板を量産する技術にめどを付けた。「現在、部品メーカーと対話しながら、部品用途に合った基板品質に改善している」と、大橋渡・先端技術研究所新材料研究部長は言う。
実はデンソーは既に独自に製造した炭化ケイ素基板を使いトランジスタを試作し、インバーター回路でモーターを動かしている。ただ、「実際のハイブリッド車に積むレベルに信頼性を高めるには、市販のものも含め、基板の品質をもう一段高める必要がある」と、恩田正一基礎研究所研究2部部長は話す。

●次世代半導体の導入シナリオとその省エネルギー効果
クールアース・エネルギー革新技術計画では、炭化ケイ素と窒化ガリウムの電子部品への実用化を2015年ごろ、ダイヤの実用化を2020年ごろと想定している
出所:経済産業省「次世代省エネデバイス技術戦略マップ」
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