低炭素社会を実現する技術を探る(第5回)水素システム

水素は燃焼してもその場ではCO2を出さない環境性の高さがウリだ。技術革新が起これば、電気と並ぶ二次エネルギーとして一般社会に流通する可能性もある。燃料電池車の普 及が、そのカギを握っている。
水素の最大の特徴は、化石燃料や原子力、自然エネルギーといった複数のエネルギー源から作れ、様々な用途に使えることだ。この特徴は電気と全く同じ。さらに元素としての水素は、地球上に無限に存在し、燃焼してもCO2が出ない。利用時には、クリーンな二次エネルギーだ。
低炭素社会において電気に代わる二次エネルギーとして、かねてから注目されてきた水素だが、実用化には大きな壁が立ちはだかる。現時点では、水素を利用する用途もインフラも未整備で、両者を同時に立ち上げなければならない。
エネルギーの研究者は「水素システムの普及は燃料電池車がカギになる」と口をそろえる。燃料電池は、水素と酸素が反応して水になるときの化学エネルギーを直接、電気に変える発電装置のこと。燃料電池車は、水素を使って燃料電池で発電し、モーターを駆動して走行する。
三菱総合研究所環境・エネルギー研究本部の志村雄一郎主席研究員は、「燃料電池車の普及には、水素を供給する水素ステーションを10年で10万から数十万カ所、一気に建設しつつ、急速に市場を立ち上げる必要がある」と断言する。そうでないと、燃料電池車も普及しなければ、多額の投資をするインフラ業界も立ちゆかなくなる。言い換えれば、政府の強力な支援などで燃料電池車をある程度普及させれば、同時に全国規模の水素 インフラもでき上がる。そうなれば、自動車以外の用途にも芽が出てくる。
一時のブームは冷めたものの、一部の自動車メーカーは、燃料電池車に並々ならぬ気合いを見せる。ホンダは昨年11月に世界初の量産型燃料電池車「FCXクラリティ」を発表した。次の本命は電気自動車に傾いたとの見方もあるが、化石燃料からの脱却を考えれば、燃料電池車の市場投入が欠かせない。電気自動車は二次電池の性能向上に限界があり、ガソリン車並みの長距離走行が難しいからだ。ホンダはもちろん、トヨタや日産自動車も、「2015年には本格的に市場投入したい」と意気込む。

ホンダの燃料電池車「FCXクラリティ」。最高時速160kmで、1回の水素充てんで走行できる航続距離は570kmに達する
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