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低炭素社会を実現する技術を探る(第3回)原子力

2008年9月5日
原子力 海外進出を目指す国産技術 小型化で途上国にも広がる

中断していた高速増殖炉の性能試験が再開され、商用化に踏み出したのと並行して、メーカーによる中小型炉の開発も進む。それぞれ、日本にとっては原子力ビジネスを進める上で重要なカードの1つになるだろう。


早ければ今年10月に、福井県の若狭湾のほとりにある高速増殖炉「もんじゅ」の性能試験が始まる予定だ。高速増殖炉は、発電しながら核分裂しにくいウラン238を燃料になるプルトニウムに変えられる。そのため、ウラン資源を有効活用でき、核燃料サイクルの要となる。

福井県にある高速増殖炉「もんじゅ」。実績を持っていたフランスから技術協力を多く受けた

ウラン価格が安い1990年代には、その存在意義を問う声もあった。だが、2006年に政府は必要性を再確認し、2050年までに商用化する目標を立てた。うまくいけば、世界で初めて商用の高速増殖炉が日本で生まれる。

とはいえ、現状の経営環境では電力会社が高速増殖炉を採用する気運はない。新型炉で注目を集めているのは、現在主流の大型軽水炉の効率を上げたタイプのほか、途上国や小都市向けを想定した中小型炉だ。

その1つが、電力中央研究所と東芝が共同開発した小型高速炉「4s」。4sは、1万kW程度の小規模な発電出力で、燃料を交換せずに30年間運転できるメリットを持っている。

●小型のナトリウム冷却高速炉
電力中央研究所と東芝は小型炉「4s」を共同開発中。全体で縦に30m程度と小さく、中小規模の都市に向く。水素製造設備とも組み合わせられる中断していた高速増殖炉の性能試験が再開され、商用化に踏み出したのと並行して、メーカーによる中小型炉の開発も進む。それぞれ、日本にとっては原子力ビジネスを進める上で重要なカードの1つになるだろう。
イラスト/東芝

燃料を交換しなくて済むのは、2.5mの中性子反射体が1週間に約1mmずつ徐々に上に移動し、反射体部分だけを核分裂させることで反応を30年間続けさせる仕組みだからだ。軽水炉より中性子が高速で動き、出力密度が高い高速炉は小型化するのに好都合である。

電中研と東芝は、夏期しか燃料物資を運べないアラスカにこの4sを設置するため、米国原子力規制委員会の審査を受ける予定だ。

三菱重工業も、フランスの原子力発電大手のアレバと中型炉の共同開発に取り組んでいる。送電網の整備が遅れている地域や、大規模より中小規模の発電を必要とする都市での需要を狙っている。

2050年に商用炉に至ると予想されている高温ガス炉も、軽水炉に比べると中小型炉に向いている。

日本原子力研究開発機構(茨城県那珂郡)が研究している高温ガス炉は、冷却材としてヘリウムガスを充てんしている。既に、原子炉出口の温度は最高950℃を達成しており、200℃程度から950℃まで幅広い熱利用が可能な点が特色だ。

その高温を利用して、水素製造を併設することが高温ガス炉の目的の1つといえる。水素製造には、「ISプロセス」が最も実用化に近い。ISプロセスとは、まずヨウ素と二酸化硫黄と水を反応させ、ヨウ化水素と硫酸を作る。そして高温ガス炉から、硫酸に900℃、ヨウ化水素に400℃の熱を与えてそれぞれ酸素と水素を取り出す。すると硫黄とヨウ素が残るので、再度同じプロセスで循環利用する。現在は高温ガス炉に接続するための材料開発などが課題だ。

高温ガス炉はコストなどで軽水炉に比べて大きな優位性を打ち出せないものの、大規模な水素社会が実現すれば、大量の水素製造インフラとして注目を集めるだろう。

また、運転にさほど水を使わないという利点から、カザフスタンなど水資源の少ない国で導入を検討しており、実証炉は海外が先になるかもしれない。日本にとっては、カザフスタンに高温ガス炉などのインフラを提供することで、資源を得る外交手段になるという見方もある。

中小型炉や高温ガス炉は、原子力の需要が先進国から途上国に広がった場合、評価が今よりも高まる可能性があるだろう。

左に水素製造プラント、右に高温ガス炉を併設すれば、水素と電力を併産できるコージェネレーションシステムになる


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