業界別 温暖化対策通信簿(第11回)

地球温暖化対策の論客である山口光恒特任教授は、日本経団連の自主行動計画を評価する。目標達成の蓋然性が無いとするNGOを批判、産業界にはCO2を1t削減するためのコストを世界に公表せよ、と説く。
聞き手/馬場未希(日経エコロジー) 写真/加藤 康
――環境NGO(非政府組織)から自主行動計画は目標達成に対して蓋然性が無いなどの批判が出ています。
山口: 何でなんだろうな。僕は自主行動計画で目標が達成できると思っている。観念的に自主的だからダメで政府がやればできるというのでは中学生レベルの話ですね。その根拠は、おそらく罰金がないからという話でしょう。欧米は基本的に罰金が無ければ守られない社会です。しかし、日本には全く違う価値観がある。今は自主行動計画で目標が守られています。2012年までに目標が守られなくなるというのならば、具体的な根拠を示してもらいたい。
――確かに自主行動計画は、欧米諸国からも理解されていません。
山口: 彼らは天動説なんですよ。自分たちがこうした考えを持っているから、みんなも同じ考えのはずだと思う。彼らの文化からすれば自主的なものは、うまくいかない。僕らは実績を示してそうではないと説明しなければならないのに、国内でも同じことを言うのは、どういうことかと思いますね。
――日本の産業界は何をすべきでしょうか。
山口: 自主行動計画でCO2を1t削減するのにどの程度のコストでやっているのかを、第三者の研究機関に委託して検討してもらうべきだと思いますね。その結果、もし日本の産業界が全然コストをかけていないということになれば、批判は甘んじて受ける必要がある。しかし、コストを出せば、おそらく欧州に比べても日本の方が高くなりますよ。
――NGOからは、必ずしも日本の産業効率は最高でないとの報告が出ています。
山口: 確かに気候ネットワークとWWF(世界自然保護基金)ジャパンが日本のエネルギー効率は最高ではない、英国に抜かれたと公表した。この数字はGDP(国内総生産)分のエネルギー使用量を根拠にしていますが、これはナンセンスで日本と英国の産業構造の違いを考慮していない。英国は工業をどんどん国外に出して今やシティで稼いでいる。第3次産業が多くなれば排出量は減るので、この指標で比べて効率をいうこと自体がおかしい。
――長期的に考えた場合、日本はどのような政策を取るべきですか。
山口: 排出権取引か自主行動計画かではなくて、技術を進歩させる政策でなければ長期的にはダメです。技術を進歩させる政策が、セクター別アプローチです。長い目で見た場合、効率のトップランナーに世界中が追い付いていくのが日本の主張するセクター別アプローチですから。僕は「世界最高効率宣言」みたいなものを日本経団連が自主的に言ってもいいし、政府が規制をしてそうした方向を目指してもよいと思う。とにかく圧倒的によい水準を目指す。その中から出てきた技術を海外に発信すれば、世界から感謝されますよ。

やまぐち・みつつね氏:1939年神奈川県生まれ。62年慶應義塾大学経済学部卒、96年から同大教授、2007年から現職。IPCC第3作業部会リードオーサー、産業構造審議会地球環境小委員会委員などを務める
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