温暖化が加速する世界の水問題 水資源国・日本の幻想(後編)
文/藤田 香(日経エコロジー)
地球温暖化は世界の水資源量の分布地図を塗り変える。日本では既に洪水と渇水が頻発し、水の調達が困難で工場を閉鎖する企業も出てきた。農畜産物という形で大量の水を輸入する日本にとって、世界の水不足への対策は喫緊の課題だ。

地球温暖化は世界の水循環を加速し、水資源賦存量は増大する。
しかし、人口増や経済発展で水需要も伸び、2075年には40億人が水不足に。
地球温暖化が進行すると、水不足に直面する地域や人口はどう変わるのだろうか。昨年発表されたIPCC(気候変動に関する政府間パネル)第4次評価報告書は、「気候変動に伴う淡水資源の変化」について以下のように予測した。
(1)今世紀半ばまでに、年間河川流量と水の使用可能量は、高緯度地域で10~40%増加し、中緯度の乾燥地域で10~30%減少する
(2)干ばつの影響を受ける地域が増える。世界的に、強い降雨の頻度が増す可能性が非常に高く、洪水リスクが高まる
(3)今世紀中に氷河や積雪に蓄えられている水が減少し、主要な山岳地帯から融解水の供給を受ける地域(世界人口の6分の1以上が居住)で水の利用可能量が減少する
●温暖化に伴う水資源賦存量の変化

地中海沿岸や米国中西部で減少する。アジアでは増大するが、人口増加などで高い水ストレスは解消されない
出所:IPCC第4 次評価報告書
(1)の河川流量(水資源賦存量)の世界分布を示したのが上の図である。世界の研究機関が発表した12の気候モデルによる温暖化予測を統括し、1900~70年の平均河川流量に対する2041~60年の変化を計算したものだ。地域によって河川流量は40%以上も変化し、水資源の分布図が塗り変わることがわかる。水が減少するのは、地中海沿岸、中近東、アフリカ南部、米国中西部など。増加するのは、ロシアやカナダなどだ。
アジアの水資源は軒並み増加するが、人口増加や経済発展による水需要の増加もあるため、水ストレスが緩和されるわけではない。むしろ水ストレスは依然高い状態にとどまる。
国立環境研究所の花崎直太研究員は河川流量の予測には“落とし穴”があると指摘する。「たとえ年間河川流量が増えても、季節変化の内訳を見た時、雨期の流量が増えて乾期にさほど増えない場合は、雨期の洪水リスクが高まるだけで、地元住民は水資源の恩恵にあずかれないケースもある」。このため、地元が水を必要としている時に水を入手できるかという要素を加味した「累積取水需要比」という指標を使って、世界の水ストレスを予測する必要があるという。
こうした高度な予測はまだ始まったばかりで結果は発表されていない。東大の沖教授は従来の水ストレス指標を用いて、温暖化による河川流量の変化だけでなく、人口増加や経済発展による水利用の変化も考慮し、世界の水ストレスが将来どう推移するかを算出した。A1(高度成長型社会)、A2(多元化社会)、B1(持続発展型社会)の経済シナリオで計算したところ、高い水ストレス状態にある人口は現在の24億人から2075年には40億人以上に増えることがわかった(下左図)。

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