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日本の食文化は
“マイ食具”の方向で進化した

――ところで、そもそも割り箸というのは日本的な文化なのですか?

高橋:  割り箸には、古来日本人が持つ“属人器”という感覚が影響していると言われています。例えば私たちは、食事の際に自分専用の茶碗やお椀、箸を使いますが、この器が特定の人に属すという習慣が“属人器”的な文化なんです。私たちにとっては当たり前のことですが、日本の食文化の特徴の1つなのだそうですね。来客に割り箸を出す、ということも、“これはあなただけのお箸です”という、もてなしの心が隠されていることになる訳です。

この「食器や箸は誰の物か決まっている」という感覚は、マイ箸が受け入れられる土壌になると思います。自分の食具で食べると、食事もよりおいしく感じられますから。


――確かに自分の茶碗に盛られたご飯を自分の箸で食べる安心感…というか落ち着き感はありますね。そう考えると、気持ちよく食事するためにも、マイ箸を持ち歩くことは、日本人にとって自然なスタイルと言えますね。

高橋:  割り箸が普及するのは、そばやうどんなど外食文化が普及し始めた江戸時代頃以来なんです。それより前の昔の日本人は、自分の箸を持ち歩いていたと考えられています。“マイ箸”は、気持ち良く食事するための、昔ながらの知恵とも言えるのではないでしょうか。


――それと、輸入の割り箸は製造過程での衛生や安全管理などの問題が気になります。マイ箸なら、そんな心配をしないで安心して食事ができるのもいいですね。でも「マイ箸を持ち歩く」となると、やはり他人の目も気になりますね。できればカッコいい“マイ箸”がほしいものです。

高橋:  そうなんですよ。マイ箸が一種のブームになることによって、これまで家の中で使われていた箸が、一躍人の目に触れる“ファッショングッズ”のような存在になったわけです。そうなると、「100円ショップで買った箸じゃカッコ悪い」という感覚が出てきて、万年筆や腕時計のように“こだわり”を持って選びたいという人が増えてきました。この現象は、僕はすごく嬉しいことだと思っています。こだわりのある高い製品が売れることで職人の仕事も増え、漆器などの日本の伝統工芸の技術がしっかりと後世まで伝わっていくことに繋がるからです。

「銀座夏野」店主 高橋 隆太氏

「銀座夏野」店主 高橋 隆太氏

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