町中のありとあらゆる地点で
風の強さや向きを調査
どれほど単価が高くても、発電に十分な風力が得られなければ、採算性を確保することができない。苫前町では95~96年に風力発電の適地を探すべく、風況調査を実施している。
「当時、三重大学にご在籍の清水幸丸教授の協力によって、風力発電が可能な場所はどこなのか、徹底的に調査しました。三重大学には、クルマに積んで上空の風況を調べる『ドップラーソーダー』という機械があって、それを2台持ち込んで町中を走り回ったんです。さらに、色々な地点に50m程度のポールを立てて風況を調べて、そのデータを基に80mの発電機を建てたらどうなるかを試算して、立地を選定しました」(森氏)。
体感的に風があると分かっていても、発電可能かどうかは別問題だ。例えば、山を背にして発電機を建てると、山が壁の役割を果たして風が通り抜けず、結果的に風車は回らない。稼動率の低い風車の多くは、「風況調査が不十分だったのではないか」と森氏は指摘する。
「建てる以上は風車が回らなければダメで、それには回る場所を徹底して吟味しなければなりません。投資に見合わない立地であれば、建てない方がいい。風力発電を事業として絶対に成立させる、という意識で取り組まないと難しいでしょうね」と森氏は語る。
森氏は全国約60の市町村が加盟する、風力発電推進市町村全国協議会の会長を務めており、道外からも風力発電に関する講演の依頼が舞い込む。協議会のミーティングや講演会の席で、森氏が繰り返し強調するのは、やはり採算性確保の重要性である。
「自治体は民間企業と比べると、そのあたりの感覚が甘いのですが、最近になってようやく採算性に対する意識が高まってきました」と森氏は感じている。
実は、苫前町にはまだ風力発電の適地があることが分かっている。しかし、風力発電機の建設に対する補助金交付の比率が2分の1からかなり削減されているうえに、北海道電力への売電単価も下がっているため、苫前町が現在行っている事業モデルを当てはめても、採算性の確保は難しい。「財政的に可能であれば増設したいのですが……」と森氏は言う。
しかし、町営ではなく、民間企業が運営するとなれば、話は別だ。苫前町には民間企業による「苫前ウィンビラ発電所」と「苫前グリーンヒルウインドパーク」という2つの風力発電施設があり、合計39基の発電機が稼動している。苫前町では風況調査の結果を提供したり、土地を賃貸したり、ノウハウを共有したり、様々な形でこの民間企業2社と密接な協力関係を築いている。
リポート後編では苫前町が発電事業を立ち上げるまでの経緯をより詳しく解説していきたい。

「苫前ウィンビラ発電所」と「苫前グリーンヒルウインドパーク」からなる、上平グリーンヒルウインドファームに立つ森氏
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