事業採算性の要となる収入は
電力会社への売電単価次第
海外製の風力発電機を導入することで初期投資は抑えられたが、ランニングコストはどうだろうか。
風力発電機は24時間365日稼動しているため、仮に担当者を常駐させるとすれば、交代要員を含めてかなりの人数が必要になるだろう。それだけの人件費が固定費に加わると、損益分岐点はグンと高くなってしまう。そこで苫前町では現場の担当者を高田氏1人とし、人件費を最小限に抑えることにした。
また、発電機が輸入品のせいなのか、「日本製品に慣れている我々には信じられないくらい機器類の故障が多い」(高田氏)と言う。故障すれば当然、メンテナンスの費用が発生する。
「日本の工業製品はJIS規格ですが、欧州はISOなので、ネジ1つでも形状が違います。そのため、故障などが起きて修理部品が必要になると、その都度、デンマークから輸入しなければならず、国産品の取り寄せよりもはるかに費用がかかります。『風力はタダ』と考えている方も多いかもしれませんが、実際には運用中のコストが相当かかっています」と高田氏。
機械的な故障以外では、雷による破損も多い。ブレードの先端には避雷針が取り付けられ、微弱な雷であればエネルギーを地面に逃すことができるが、冬期に発生する雷はブレードを割るほどの大きなエネルギーを持つ。先端が欠ける程度の軽症の場合は、そのまま運用しても問題ないが、大幅な修理を要するほどの破損はこれまでに3回発生しているという。

ブレードの素材は非導電体のGFRP(ガラス繊維強化プラスチック)だが、強力なエネルギーを持つ冬季雷だと、雷の被害を受けるケースもある。
採算性を検討するうえで重要になるのが、風力発電で得られる収入だ。起こした電力は電力会社に購入してもらうことになる。苫前町が風力発電事業を開始した当時、北海道電力では風力発電の比率を最大電力需要の3%、電力量に換算して15万kWとしていた。
日本では原子力と火力(LNG、石炭、石油等)で発電量の大半を占めるが、不安定な風力発電分のバッファ役を担っているのは発電量の微調整が可能な火力だ。とはいえ、CO2排出量削減が課題となっている今、安易に火力発電のウエイトを高めるわけにもいかない。
15万kWは無風の日が続いても供給体制に影響しない範囲として定められた数値である。苫前町ではそのうち 5.28万kWで北海道電力と契約をした。
「苫前の場合、売電単価は1kWあたり11円95銭。風力発電機の減価償却期間である17年間は、この単価で買い取ってもらえる契約になっています。今は状況が違って、契約制ではなく入札制度や抽選になっていますから、売電単価は3円30銭くらいでしょうか。うちは契約したタイミングが良かったんですよ」と森氏は語る。
売電単価に影響を与えるものとして、2003年に施行された「RPS法(電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法)」がある。これは、電気事業者に新エネルギー由来の電気を、販売電力量に応じて一定割合以上の利用を義務付けるというもの。
北海道電力管内では、苫前町以外にも風力発電を行っている地点がいくつもあり、RPS法の定めた数値を十分達成できることから買い増す必要がなく、単価があまり上がらないようだ。
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