このページの本文へ
ここから本文です

ごく当たり前に吹いている
風を利用することの難しさ

北海道北西部に位置する人口約4000人の町、苫前では、町を挙げて風力発電を推進している。苫前町には年間を通じて日本海からの強い海風が吹きつけ、冬場に大空を勇壮な凧が舞う「北海道凧あげ大会」を開催するなど、風を観光資源として利用してきた。

しかし、この風はメリットだけをもたらすものではなく、住民にとっては悩みの種でもある。例えば、強い風が吹けば少しの雪でも吹雪となり、一寸先も見えないような状況にたちまち変わってしまう。そうなると海沿いの国道では、道路の境界線が判別できないほどだ。

「この風をなんとか有効に使う手立てはないのだろうか」――苫前町では常にそう考えていたという。

苫前町長 森 利男氏

苫前町長 森 利男氏

「風力発電の補助金制度があると聞いて、その第1回の説明会に参加したのがすべての始まりでした」──そう語るのは苫前町長の森利男氏だ。1995年当時、同町の企画課長だった森氏は、まちおこし協議会を組織するなど、全国の自治体と交流を持っていた。そこでも風力発電と、その補助金制度が話題に上っていたという。

自治体関係者の間では「自然の風を利用するのだから、原材料費はタダみたいなものだ」「それで売電すれば、自治体の財源となる」「白い風力発電機は環境意識の啓発になるし、内外に対して自治体の環境への取り組みをアピールできるだろう」「観光資源としても活用できるかもしれない」……。そんなことが語られていた。しかし、いざ始めてみると思惑通りにはいかなかった。

ある地域では、環境に優しいイメージをアピールするはずの風力発電機が自然景観を破壊するとして、建設に反対する住民運動が起きた。建設に向けて計画が進んだ地域でも、野鳥が風力発電機に衝突して死んだと報じられると、一気に「風力発電は環境に悪い」という論調に傾いてしまう。建設に莫大な資金を要する点も問題となった。政府の支援制度で補助金を受けても、残る費用は自治体が負担することになるからだ。

そして何よりも予想外だったのは、風力で発電することの難しさだった。森氏も「最初は風さえ吹いていればいいだろうと思っていましたが、そんな簡単な話ではありませんでした」と語っている。

ライフラインである電力には安定供給という使命がある。本来、風力発電でも安定的に発電されるのが理想だが、風は自然のものだけに気まぐれだ。台風のようなものすごい強風の日もあれば、完全無風の日もあり、それに伴って発電量が一定しない。電力はその性質上、大容量を自在にためておくことが難しいため、これが大きな問題になる。

「風力発電が盛んな欧州は地形がフラットなので、風が比較的安定していますが、日本はそうはいきません。国土の起伏が激しいので、風が巻いたり、風向きが変化したりするんです。よほど立地選定を慎重に行わないと、継続して風力発電機を稼動させることは難しいでしょうね」(森氏)。

せっかく建てた風力発電機が全然回っていないという事例は、既にいくつも報じられている。機械的なトラブルが原因のものもあるが、見込み通りに風力が得られなかったものも少なくない。こうしたなかで、苫前町が10年にわたって風力発電事業を続けてこられたのはなぜだろうか?

ここから下は、過去記事一覧などです。画面先頭に戻る バックナンバー一覧へ戻る ホームページへ戻る

記事検索 オプション

SPECIAL

日経BP社の書籍購入や雑誌の定期購読は、便利な日経BP書店で。オンラインで24時間承っています。

ご案内 nikkei BPnetでは、Internet Explorer 6以降、 Safari 2以降、Opera 8以降、Netscape 8.1以降またはHTML 4.01/CSS level 1, 2をサポートしたWebブラウザでの閲覧をお勧めしております。このメッセージが表示されているサポート外のブラウザをご利用の方も、できる限り本文を読めるように配慮していますが、表示される画面デザインや動作が異なったり、画面が乱れたりする場合があります。あらかじめご了承ください。

本文へ戻る