生産者として消費者に知ってほしいこと
直売所は生産者にとって、規格外品や少量生産品でも出荷でき、収入に結びつけることが出来る場だ。既存の流通とは違う方式ではあるものの、消費行動が伴う以上は、消費者不在の販売方式ではうまくいかない。消費者の声を吸い上げる仕組みや、イベント等のサービスの充実といったことも重要であろう。
あんずの里市利用組合では消費者の目線を考慮し、組合員に対して「お客さんの前に出るときは帽子をかぶる」「商品を管理するラベルは見やすい場所にきちんと貼る」「コンテナは洗ってきれいなものを使う」といったルールを遵守するよう指導している。

営業時間中に店頭へ出る場合、生産者は帽子をかぶる決まりになっている。写真は、ラッキョウなどの漬物を陳列しているところ。漬物は隠れた人気商品で、漁村の民宿オーナーが買いに来ることもある。その民宿では以前は自家製の漬物を出していたが、客数が少ない時期は多品目の漬物を用意することが難しい。あんずの里市で小分けした手作りの漬物を購入すれば、毎日違う種類を提供することができる。民宿のお客には手製ならではの素朴なおいしさが好評だという。
規模が拡大し、運営方法がシステマチックになっていっても、津屋崎地区の生産物にこだわるという点は青空市のころから一貫している。大手流通のように全国各地から仕入れれば、あらゆる野菜を扱えるが、地場産にこだわれば、その時期に津屋崎地区で採れない野菜を販売することはできない。「この点は消費者に理解してほしい」と井ノ口氏は言う。
さらに井ノ口氏はこう続けた。「台風の翌日に商品がないことはお客さんもわかってくださいますが、農作物はその後もしばらくは影響が出ます。何日かすると、お客さんは台風のことを忘れてしまうので、『なんで商品がないのか?』と怒られることも多くてね……」。
もう1つ、消費者に伝えたいのが農薬のことだ。昨今は無農薬にこだわって、農薬を完全悪のようにとらえる消費者もいるという。
「冬場なら品種によっては無農薬が可能ですが、夏場は非常に難しいのです。私がよく使う表現は『赤ちゃんに薬を飲ませるようにして農薬を使っています』ということ。種苗が小さいうちは、最低限の農薬を使わないと、収穫できないんですよ。危なくない範囲内で使っていることをわかってもらえると嬉しいですね」と、井ノ口氏は語る。
直売所には、前編で紹介したように、生産者と消費者が情報を交換する場としての機能が期待されている。あんずの里市では、希望者に対して圃場(ほじょう)見学なども実施し、コミュニティ機能の強化を図っている。
「あんずの里市を立ち上げたときから、家族や周囲には『なぜそんなに大変なことをやるのか』と言われ続けてきましたけど、頑張ってやり遂げたら嬉しいじゃない? 仲良しグループから始まってもう10年以上になりますが、今さらやめられませんよ。だって、楽しいんですから」。
そう言って快活に笑う井ノ口氏に、農家のお母さんのたくましさを感じた。

自ら育てた赤米や黒米、水芋、食用のヘチマを手にした井ノ口氏。井ノ口氏はあんずの里市を大きくするために、福津市市議会議員まで務めた経歴を持つ。これまでに一番嬉しかったのは「平成17年度日本農林漁業振興会会長賞を受賞したこと」だという。
(前編はこちらから)
問い合わせ: あんずの里市
http://members.aol.com/anzunosatoichi/
住所: 福岡県宗像郡津屋崎町勝浦1667-1
電話: 0940-52-5995
営業時間: 8:30~17:00
定休日: 火曜
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