ここまでわかった!地球温暖化の現実 (第3回)
取材・文/サラ・デウィート、井上雅義
●気候変動がもたらす生命の危機を避けるには莫大な費用がかかる。先進国が招いた温暖化のツケを、発展途上国が背負っている。
気候変動の影響によって2000年までに毎年15万人が死亡しており、今後は2020年までに年間30万人もの人々が犠牲になる危険性があるとする試算を、WHO(世界保健機関)が発表した。犠牲者の多くは、激変する気候に適応するための経済力を持たない発展途上国の人々である。
WHOは気候変動のシミュレーションを基に、気候変動によって発生しやすくなるマラリアや下痢性疾患、栄養失調などの健康被害の広がりを見積もった。感染症や食糧不足は、公衆衛生のインフラが整備されておらず、農業技術が進んでいない発展途上国に集中する。
米バテル記念研究所のゲリー・ストロークス氏は、「我々が『開発』と呼んでいることのかなりの部分は、気候変動への適応策でもある」と説明する。何を着るか、どのような家を建てるか、どんな作物を植えるか、公衆衛生システムをどう組み立てるかなど、すべては気候変動による影響を回避することにつながる。
裏を返せば、開発が遅れている低所得国の人々は、様々な仕組みに守られている先進国の住人からは想像できないほど、気候の変化に弱いのである。
米ウィスコンシン大学のジョナサン・パッツ教授は、「WHOの試算は、冷静な視点で様々な健康リスクを科学的に検討している。ただし、気候変動の影響が明らかな項目に限定して分析しているため、極めて控え目な数字になっているとみるべきだ」として、実際の被害はそれ以上に拡大する危険性があることを示唆する。
近代化の恩恵を十分に手にしていない発展途上国が、化石燃料を大量消費した先進工業国のツケを払わされるという、実に皮肉な現実が明らかになってきた。
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