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立ち上がる巨大市場で地力発揮する日本企業 太陽と風で飛躍せよ!(第5回)

2007年6月12日

第1回第2回第3回第4回はこちらからどうぞ)

ものづくりの老舗が本格参入 鉄鋼、自動車の大手が技術力発揮

文/金子憲治、藤田 香(日経エコロジー)

高さ65mのタワーの上にあるナセル(第3回に掲載)の内部は、思った以上にシンプルだった。「これだけ空間がすっきりしているのは同期型の発電機を採用したから。他社が採用する誘導型の風車はギア(増速機)が並んで、広い空間はない」と、日本製鋼所室蘭製作所の吉田兵吾・風力製品部担当部長は説明する。

日本製鋼所・室蘭製作所に設置された同期型の風車は、増速機がないため発電機の内部はシンプル(左)。右は1号機設置時の様子。タワーの先端の丸い出っ張りが発電機

日本製鋼所・室蘭製作所に設置された同期型の風車は、増速機がないため発電機の内部はシンプル(左)。右は1号機設置時の様子。タワーの先端の丸い出っ張りが発電機

今年、創業100周年を迎える鉄鋼製品の大手、日本製鋼所。かつて艦砲を製造する軍需工場だったここ室蘭製作所では、2006年度から風力発電設備の生産に乗り出した。国内で本格的に大型風車を生産するのは、三菱重工業、富士重工業に次いで3番目だ。

発電方式は三菱重工と富士重工が誘導型なのに対し、日本製鋼所は「永久磁石同期型」という最先端技術を採用。同期型は発電効率が高く信頼性も高いが、価格の高さからこれまで普及してこなかった。

そこにあえて挑んだのは、後発組として風車を差別化するとともに、信頼性の高い製品を送り出したいというものづくりへのこだわりがあったからだ。

風力事業者も同社の風車を評価する。「増速機が無いために故障がない。突風や雷対策も日本の気象に合わせて設計してある。電力関係の機械を長年造ってきた品質管理の高さを感じる」と、電源開発の三保谷明・風力事業室長は言う。「それでいて、ちゃんと競合できる価格になっている」

日本製鋼所が風力事業に乗り出したのは2000年。エネルギー関係で新規ビジネスを検討する中で、鉄鋼技術がタワーに生かせる風車に注目した。まず、米GEウインド社の風車向けにタワーを生産し、ナセルと羽根を取り寄せて組み立て、GEウインド社製の風車として販売を始めた。

しかし、老舗メーカーとして核心部の技術を知らないのは歯がゆく、2005年に室蘭製作所内に羽根を作る子会社のJ-Winを立ち上げ、オランダメーカーから技術を導入して羽根の製造も始めた。この羽根は荏原などにも販売し、既に70本の製造実績を持つ。

風車の羽根はFRP 樹脂製だ。開発に当たっては、広島製作所にいる樹脂成型機の技術者を動員した。

それでも、「まだ本体はブラックボックスだった。大きく事業展開するには本体も内製する必要があると考え」(唐牛敏晴・風力製品部部長)、ついに発電機を含む本体の製造にも乗り出した。その際、他社と差別化するため、故障が少なく、修理・保守の負担が小さい同期型の発電機を選んだ。発電機のシステムにはオランダメーカーの技術を導入した。

「最近、誘導型の部品は価格が10~20%上昇しているが、永久磁石はさほど上がっていないため、価格差も縮まっている。同期型は修理・保守コストも抑えられるため、ライフサイクルコストでは誘導型と同程度になる」と唐牛部長はみる。

風車の製造には、同社の組み立て技術の強さが生きる。「組み立てると部品同士の較差が累積して誤差を生むが、それをどう減らすかは大型産業機械で培ったノウハウがある」

これまでに12基を受注し、さらに19基を契約交渉中だ。室蘭製作所内に集中監視センターを設置し、納入したすべての風車の挙動を24時間体制で確認して遠隔操作する。

日本製鋼所は現在、風車の技術者を室蘭製作所に25人、J-Winに50人抱えている。「納入数が増えれば人員を増やす」(唐牛部長)。2006年度の風力事業の売り上げは約39億円、受注額は60億円だったが、2010年度には受注額300億円を目指す。

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