立ち上がる巨大市場で地力発揮する日本企業 太陽と風で飛躍せよ!(第4回)

文/金子憲治、藤田 香(日経エコロジー)
急伸する風力・太陽光発電の波に乗って、自らの本業にこの巨大市場 を取り込もうとする動きが出てきた。
物流大手の日本通運は風力発電設備の運搬に新しい市場を開拓した。「風車ビジネスが成り立つためには3つの道が必要。『風の道』『電気の道』『車の道』。風の道とはよい風が吹くこと、電気の道とは系統連系、そして車の道とは風車を建設地まで運ぶ車道。この3つ目の『運搬』が最近、風車ビジネス成立のキーポイントになってきた」と、日本通運の小原建郎・重機建設事業部副部長は言う。
日本では風力発電設備の建設地は山の稜線近くになりがち。トレーラーを駆使して、長さ40mもある羽根(ブレード)を山肌にぶつけず、重さ数十トンものナセル(第3回に掲載)をスリップさせずに斜面を運び上げるには高度な技術が求められる。
そこに新規需要を見いだしたのが日通だ。同社は1999年から風車の運搬・設置事業に本格的に乗り出し、「現在国内で7割のシェアを持つ。既設の約1000基の風車のうち700基は当社が建てた」と、小原副部長は胸を張る。運搬・設置事業の売り上げは99年に5億円だったが、2004年以降は毎年20億~30億円で推移している。
風力発電設備は羽根、ナセル、タワーなどに分けて工場から出荷され、建設地に近い港まで船で運ばれる。陸揚げされた後は特殊トレーラーで建設地まで運ぶが、その際、十分な道幅が確保されているか、カーブは曲がれるか、重量制限は大丈夫かなどを検討し、輸送路や重機を決めるところに技術力が問われる。
タワーは3~4分割して運ぶが、羽根は分割できない。日通にとってそれまで最も長い運搬物は新幹線の車両で、長さ25mだった。「風車の羽根も当初は32mほどだったが、あっという間に40mが主流になり、今では45mと大型化している。カーブを曲がるのが難しくなっている」と小原副部長は打ち明ける。
許認可の取得も必要だ。車両総重量が大きい場合や長尺物を運ぶ場合は、国土交通省などの道路管理者や警察に届け出る必要がある。
実際の搬送時には、山肌を削る、電柱や信号機、標識をずらすなどの対策に応じて、山林所有者や電力会社、警察、国交省などから許可を取得しなければならない。「こうした交渉や、綿密な搬送計画が立てられるスタッフの存在が強み」と小原副部長は話す。
全国に270ほどある支店も威力を発揮する。地元の裏道などの道路情報を持っており、「そこを搬送の前線基地にできる。日通のネットワークが生かせる」(小原副部長)。

日本通運は風力発電設備の運搬・設置ビジネスの7割のシェアを握る。羽根をぶつけずカーブを曲がる技術が必要。時には起立装置(右)を使って人家をぬう
日通は風力発電設備専用のトレーラー購入のためにこれまで15億円を投資した。独自開発したトレーラーもある。その1つが起立装置(上の写真)で、道幅が狭い時の「最後の手段」だ。しかし、起立装置を使う搬送は時間もコストもかかる。それでも最近は、起立装置ありきで立地を考える事業が増えてきたという。
日通はこれまで火力や原子力の運搬・設置ビジネスも手掛けてきた。風力が決定的に違うのは、「既存の道を前提にしなければ、経済的に成り立たず、地域にも受け入れられない点だ」という。それだけに、事業者からは計画段階から、輸送の可否やコストの問い合わせがある。「風車の機種選定も運搬の事情から決まることがある。『この道でこの立地なら2000kWの機種までしか通れない』と助言する。風車事業者から最近、『立地なら日通に聞けばよい』と言われるまでになった」(小原副部長)
建設予定地に運ばれた風力発電設備の部材はクレーン2基を使って組み立てる。組み立て用のクレーンは、現在輸入機が7~8基、国産機が十数基ほどしかなく、品薄状態になっている。「風車用クレーン・ビジネスもここ6~7年で立ち上がった新ビジネス。政府目標の300万kW 達成までにまだ5年、それ以上の電力量に8年かかるとみており、風車の運搬・設置事業は新規事業として力を入れたい」と小原副部長は語る。
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