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パーク&ライド再考(後編)

2007年3月23日

前編はこちら中編はこちらからどうぞ)

●加賀百万石の城下町として知られる石川県金沢市は、日本三名園のひとつ「兼六園」を筆頭に風情溢れる名所旧跡が点在し、金箔や加賀友禅といった伝統工芸が脈々と受け継がれる歴史ある町だ。そんな古都としての佇まいを残す一方で、金沢市は北陸を代表する大都市としての“顔”も持つ。市中心部の香林坊や武蔵ヶ辻周辺には企業や商業施設が集中し、曜日を問わず活気に溢れている。
●金沢市における「パーク&ライド」の取り組みは、市街地の交通渋滞緩和策として1988年(昭和63年)に実施された観光客向けの施策に端を発する。その背景には、前回の特集「パーク&ライド再考(中編)」で紹介した鎌倉市と同様、観光都市であることに加え、北陸地域におけるビジネスの中心にもかかわらず歴史があるが故の狭い道路などによる慢性的な交通渋滞が大きな問題となっていたことが挙げられる。
●その後、金沢市では住民はもちろん、石川県や周辺市町などの行政、さらには警察等と協同する形で多角的な交通政策を実施。途中、紆余曲折はあったものの、交通渋滞は見事に緩和する方向に進んだ。いまや全国の自治体から交通政策の先進事例として熱い視線を注がれている。そんな金沢市の取り組みの数々を紹介すると共に、今後のパーク&ライドの可能性について、あらためて考えてみよう。

取材/土屋 泰一、林 愛子
文/林 愛子 写真/山田 哲也

昔ながらの街並みを残す古都ゆえの交通問題

犀川と浅野川という2本の川が市中を流れる金沢市は、戦災を免れたこともあって、主計町の茶屋街や長町の武家屋敷跡など、かつて城下町として栄えたころの面影を今なお色濃く残している。その風情ある街並みこそが古都・金沢の魅力で、古き良き時代へ思いを馳せつつ、のんびりと散策するような過ごし方がしっくりくる街だ。

しかし、多くの観光客を魅了する昔ながらの街並みは、見方を変えれば、日本が「クルマ社会」へと歩みだす以前の姿でもある。金沢市を訪れたことのある方ならご存知と思うが、市中にはクルマがすれ違うことのできないような細い路地や、三叉路・五叉路といった変則的な交差点が至るところに存在する。

加えて、3つの台地と2つの川を有する地形上の制約もあって、郊外から金沢市街地へ乗り入れる道路の確保には限界があり、街全体がクルマに対して“閉じている”ような格好だ。

公共交通網としては、JR北陸本線、北陸鉄道浅野川線・石川線と、鉄道が3路線通っているものの、いずれの駅も中心市街地の外縁部にある。それ故に、市民にとっても観光客にとっても、バスは移動手段として従来から欠かせない存在となっている。

こうした土地柄を前提に、金沢市では他の自治体に先駆けてバスを使ったパーク&ライドの導入を進めてきた。そもそも金沢市で交通に関する議論が活発化し始めたのは、経済成長著しい昭和40年代のことだった。

当時はマイカーブームでクルマが急速に普及し始めた時代であり、人口が右肩あがりに増え続けた時代でもあった。金沢市では人口増に対応すべく郊外の区画整理を推進。それによって市民の居住地は犀川と浅野川に囲まれた市街地から、郊外へと移り始める。

しかし、住宅が郊外へ移転しても、勤務地や商業施設などは冒頭で紹介した2本の川の内側である市街地に存在する。その結果、自然と郊外から市街地にクルマで乗り入れるようになり、金沢市内において交通渋滞が発生したのは当然の流れといえる。元々、城下町だった金沢の市街地はクルマに適した環境ではなく、駐車場設置などにも限界があり、これらの要因によって広範囲にわたる交通渋滞が慢性化していくことになる。

そこで金沢市では、交通渋滞の緩和策として、駐車場の新設や周辺道路網の整備など様々な角度から交通政策を検討し始める。本稿のテーマである「パーク&ライド」も数ある交通政策のひとつであり、1988年(昭和63年)のゴールデンウィークには金沢市初のパーク&ライドの実証実験が行われた。対象は金沢市を訪れる観光客で、兼六園をはじめとする市内観光地周辺へのクルマの乗り入れを抑制しようというものだった。この試みは渋滞緩和に一定の効果をあげ、今なおゴールデンウィーク期には観光客向けのパーク&ライドが継続して実施されている。

金沢市 都市政策局 交通政策課担当課長補佐 浅川明弘氏

金沢市 都市政策局 交通政策課
担当課長補佐 浅川明弘氏

「19回目となった昨年度(平成18年度)の取り組みでは、前年比で利用者が110%という好結果が出ました。ゴールデンウィーク期のパーク&ライドは定着しつつあると見ています」──こう語るのは、金沢市 都市政策局 交通政策課 担当課長補佐である浅川明弘氏だ。

観光客向けのパーク&ライドについては、ゴールデンウィーク期以外にも実施してほしいという声もあるという。「そこは課題の1つです。例えば、昨年に実施したお花見シーズンのパーク&ライドは、開花時期が毎年変わるので日付の設定が難しいんですね。しかし“百万石まつり”のときのパーク&ライドは昨年初めての実施にもかかわらず、予想以上に市民の利用が多かったので、今年(2007年)も実施する予定です。今後はこうしたイベントとの連動も検討すべきと考えています」(浅川氏)。


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