小さな違反こそ厳しくしかる

キヤノン電子社長 酒巻 久氏
さかまき ひさし氏:1940年栃木県生まれ。
67年1月キヤノン入社。91年2月取締役総合企画担当兼ソフト事業推進本部長。92年5月取締役生産担当兼環境保証担当兼生産本部長。96年3月常務取締役生産本部長。99年3月から現職。社長就任後6年で売上高経常利益率を8倍の12.9%まで引き上げ、高収益企業に変えた
写真/的野弘路
一生懸命やったんだけれども気づかなかったといった前向きな失敗は評価すべきです。一方で、言われたからやったというような無責任な失敗は怒鳴らないといけません。
特に、ルール違反をした社員に対しては、徹底して怒ります。小さなものこそ、放置せずに処罰しなくてはいけません。小さなルールを守れなければ、大きなルール違反につながる危険性が大きいからです。
新入社員に対して、なぜルールを守らなければいけないかを含めて、最初に教育しています。ルールは、自分たちが仕事をする上で、最も安全に行動できる決め事。酔っ払い運転を思い浮かべてもらえばわかりますが、ルールを守らなければ事故を起こしやすくなるわけです。
当社ではこんなことがありました。環境対策の一環で、(社員用の)駐車場の中央に樫の木を並べて植えてあるのですが、車を後ろ向きに止めると樹木を傷めるので前向きに止めるルールにしています。3回違反したら辞めてもらうと伝えていて、実際、このルールを守れなかった28歳の男性社員は依願退社する結果になりました。
周りは反対しました。しかし、こんなやさしいルールを守れない人が、工場では決められた場所以外で溶剤を流してはいけないといったルールを守れるでしょうか。反対した人の中にも、うなずく人はいませんでした。それ以降、後ろ向きに止める車は1台もありません。「小さなことだからいいだろう」で済ますのではなく、小さなルールだからこそ守るんです。こういうことを教え込むとルールを守らない人は激減します。
失敗を吸い上げるとともに、ルール違反に対しては経営トップが厳しく処置していないと、隠そうとする体質は変えられません。当社も100%大丈夫と言えるわけではありません。隠さず報告してくれる風土を、一生懸命作っているだけです。
あいさつがないのは要注意
コミュニケーション不足は、報告しなくなる1番の要因です。当社の社員がすぐに報告するようになったきっかけは、あいさつなんです。「おはよう」と言ってから「何か問題はある?」と続けると、スムーズに報告してくれます。
あいさつがなくなれば、コミュニケーションもなくなります。大手企業に多い話ですが、「若い社員たちが私にあいさつしないんだよ」と社長が言うのをよく耳にします。これではコミュニケーションは良くなりません。偉い立場かどうかは関係ありません。むしろ、社長から積極的に声をかけるべきです。 (談)

上記の記事「どの企業にも潜む落とし穴 環境不祥事を防ぐ」(後編)は、『日経エコロジー』2006年12月号に掲載された特集です。なお、記事中に記載した内容については、『日経エコロジー』2006年12月号掲載時の内容となっております。
『日経エコロジー』は環境経営やCSR(企業の社会的責任)推進体制の構築、ISO14000の導入・運用を担当される方々に向けた、月刊ビジネス誌です。
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