どうなるどうする温暖化 感染症:熱帯病が北上中、戦略的な蚊対策を
文/荒川直樹(日経エコロジー)
昨年11月、イタリア北東部のラベンナ州にパニックが広がった。インドから帰国した人の中にチクングニヤ熱という熱帯性ウイルス疾患に感染した患者がいたからだ。患者は9月28日に発症したが、治療を受けていたため、その後の事態を予想した者は誰もいなかったという。
しかし、11月に入ると患者が住む町から9~49kmも離れた4つの町で次々と患者が発生。最終的には300人が病気にかかり、そのうち1人が死亡する事態に発展した。
日本でも高い流行の危険性
日本ではあまり知られていないが、チクングニヤ熱は今、世界中で猛威をふるっている感染症の1つだ。2005年にはインド洋に浮かぶフランス領ユレニアン島で流行し、翌年までに人口の約半分に相当する15万人が発症。237人が死亡する惨事を引き起こした。
こうした中で起きたイタリアのチクングニヤ熱流行は、欧州の感染症専門家にとっても衝撃的だった。それまでチクングニヤ熱に感染した人が帰国後に発症するいわゆる「輸入感染」の事例は、フランスやスイスでもあった。日本でも2例が報告されている。しかし、チクングニヤウイルスが他の人に感染するためには、熱帯地方に生息する蚊、ネッタイシマカの媒介が必要であり、温帯地方以北では流行の恐れはないと従来は考えられてきた。
では、イタリアでチクングニヤ熱が流行したのはなぜか。「専門家が調査したところ、チクングニヤウイルスを運んだのは、ヒトスジシマカという蚊であることがわかった。ヒトスジシマカは、もともと熱帯地方を中心に生息する蚊だったが、温暖化とともに世界中の温帯地方へ進出。同時にチクングニヤウイルスに変異が起き、ヒトスジシマカでも感染するようになった」と、国立感染症研究所昆虫医科学部の小林睦生部長は説明する。
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