第33回 排出量取引は“現状維持”で試行 「自主行動」は2013年から協定に
文/馬場未希(日経エコロジー)
6月26日、経済産業省と環境省は今秋から試行を始める国内排出量取引制度の制度案を発表した。福田康夫首相が試行を表明したことに応じたもので、制度の本格導入の条件や課題を見極めることが目的だ。
経産省と環境省は、26日にそれぞれ開いた会合で、各省の制度案を明らかにした。今後、政府内で両案を基に、制度設計を進める。
両省とも、希望する企業が自主的に制度に参加することを想定している。政府が企業に対して強制的に排出量の上限を定める手法は採らない。
今回は文字通り試行にとどめ、京都議定書の第1約束期間における産業部門の排出削減は、従来通り自主行動計画を中心に進めることに、現時点で変わりはない。試行開始後も実態としては、企業に新たな負担や義務は生じない見通しだ。
経産省の制度案はこうだ。参加を希望する企業が、温暖化ガスの削減目標を自主的に設定する。目標は総量でも、原単位でもよい。達成できない場合は、他社で余った排出枠か、中小企業のCO2削減を支援する「国内CDM(クリーン開発メカニズム)」制度から生まれる排出枠、または京都議定書のCDM排出枠を調達する。
一方、環境省は、「自主参加型国内排出量取引制度( JVETS )」を軸に提案した。既に自主的な総量目標を定めているJVETS参加企業に加え、自主行動計画に取り組む企業も、任意で総量や原単位目標を定めて参加できるようにする。業種ごとのエネルギー効率の指標(ベンチマーク)を基に目標設定する企業も募り、JVETS独自の排出枠やCDM排出枠などを売買する。

●今秋から試行する国内排出量取引制度の見通し
両省案で共通する「企業の自主参加」「原単位目標も認める」などの点は、政府で制度設計を進める上での前提になるだろう。加えて、産業界が懸念する「投機目的の排出枠売買を防ぐ仕組み作りが課題になる」と、環境省の高橋康夫・市場メカニズム室長はみる。また、元々別個の物だった国内CDMの排出枠とJVETSの排出枠を、「試行を通じて排出枠の統合ができないか検討したい」と、経産省の藤原豊・環境経済室長は話す。
制度の課題を洗い出すには、様々な業種の多くの企業が参加するのが望ましい。しかし、現時点では企業に制度参加の意義や利点が見えづらい。企業に参加の利点を示せるかが、試行の成否を占いそうだ。
経産省の会合は同日、2013年以降における産業界の温暖化対策に関する報告書も公表した。国内排出量取引制度の本格的な導入方針は示さなかったものの、企業への排出枠の割り当て方法について選択肢を示し、なかでもエネルギー効率指標に基づく割り当てを評価した。
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