自然と共生する“日本人の原点”を
今に伝える夜神楽
夜明けが近付くと、いよいよクライマックスだ。「柴引き」「伊勢」「手力雄(たぢからお)」「鈿女(うずめ)」「戸取り」「舞開き」は岩戸六番と呼ばれ、岩戸に隠れた天照大神(アマテラスオオカミ)を呼び出す有名な神話をモチーフにしている。
その中でもハイライトといえるのが「戸取り」である。力自慢の手力雄命(タヂカラオノミコト)が顔を真っ赤にして髪を振り乱し、天岩戸を持ち上げ、投げ飛ばす。暗黒の世界に光が戻る瞬間だ。同じころ、現実の世界でも白々と夜が明け始める。

「手力雄」の舞いでは白い面で登場した手力雄命(タヂカラオノミコト)が、「戸取り」の舞いでは赤い面に付け替えて登場。重い岩戸を持ち上げようと力を振り絞るため、顔が真っ赤になって髪は逆立つのだ。1つ1つ職人が手彫りするという神面の表情も、夜神楽で注目したいポイント
最後は、眩しい夜明けの朝日とともに神庭の雲(天がいの白布)を下ろす「雲下ろし」。紙吹雪が華々しく舞うなか、二日一晩かけた夜神楽は大団円を迎える。
粛々と繰り返される独特の音楽。ときに単調で、眠気を誘いながらも厳かで神秘的な舞い。夜神楽は、神々と過ごす不思議な時空間だ。一方で、適度に“良い加減”でもある。というと語弊があるが、神社で行われる厳粛な神楽と違い、あくまで地域の人々の手による祭りである。おおらかなテンポと機知にあふれ、神々への敬愛と感謝がじかに伝わってくる。毎年、「神を見た気がする」という観客がいるのも当然なのだろう。
かつて自然の中に八百万の神々を見出し、自然とともに生きてきた日本人――その心の原風景、“日本人の原点”ともいうべき精神を、今に伝えるのが高千穂の夜神楽なのである。

正面に見えるのは瓊瓊杵尊(ニニギノミコト)が降り立った「天孫降臨の地」の候補とされる二上山の雄岳と雌岳。伝説と神話にまつわる場所がそこここにある不思議な場所・高千穂
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