二日一晩かけて舞い明かす
神話になぞらえた神々の宴
舞いは全部で33番あるが、地域によってその数や順序は異なる。年によって変わることもあり、さらに当日の状況によって舞いが短縮されることもあるという。あくまで地域の祭りであり、形式ばった堅苦しいものではないのだ。観客を巻き込んでいく楽しい舞いもあり、臨機応変に進められるのが夜神楽の特徴だ(注:本稿では基本的に2008年2月10日~11日に上田原で行われた夜神楽に基づいて紹介)。
そして何といっても翌朝までの長丁場。しかも長い番付(演目)だと1時間以上、舞い続けるものもある。簡単にその内容を紹介すると、最初に場をはらい清める「彦舞」「太殿」。続いて、式三番と呼ばれる「神降(かみおろし)」「鎮守(ちんじゅ)」「杉登り」で、神々の降臨を描く。その後、「地固め」「幣神添(へいかんぜ)」までが宵殿七番とされる。

瓊瓊杵尊(ニニギノミコト)が地上に降り立った際、案内役を務めたという国つ神(地上の神)・猿田彦命(サルタヒコノミコト)の舞い。高千穂では親しみを込めて「彦」と呼ぶことから「彦舞」と呼ぶ。舞台中央に置かれた台は天の浮橋に見立てたもので、猿田彦命はこの橋に立って不浄ばらいをしたという。「ホオズキのように赤く照り輝いている」という神話の記述にならった面の様相が特徴
神楽宿の外では竹に焼酎を入れた「かっぽ酒」や、煮しめなどの神楽料理が供される。舞台は家の中とはいえ、戸が取り払われて真冬の夜風が吹きすさぶため、全33番を通して見る人は少ない。夜が更けて2日目に突入し、2時3時ともなるとやはり睡魔が観客を襲う。ここで“眠気覚ましの舞い”ともいわれる「御神体」だ。
伊耶那岐命(イザナギノミコト)、伊耶那美命(イザナミノミコト)による男女和合の舞い。酒を飲んで酔っ払った両神は観客席にまでなだれ込み、場がどっと沸く。そのほか、太鼓の上で逆立ちを披露する「八つ鉢」など、宴会の余興のような番付もある。

「御神体」の舞いで酒を飲み、酔っ払った伊耶那岐命(イザナギノミコト)と伊耶那美命(イザナミノミコト)。2人の“絡み合い”や観客にまで抱き付くシーンが面白く、眠気も覚める人気の番付だ

焼酎を竹筒で温めて飲む「かっぽ酒」

煮しめなど、ふと郷愁にかられる素朴な味の神楽料理は、地域の女性たちが前日から準備。夜神楽は舞い手だけでなく、地域全体が協力して初めて成立するのだ
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