第25回 ポスト京都で農地を吸収源に稲わら管理などでCO2770万t[温暖化対策]
CO2排出源と考えられてきた水田などの農地が、管理の仕方次第でCO2を吸収する可能性が浮上した。日本全体で770万tを吸収するとみられる。ポスト京都では森林に加え、有望な吸収源になるかもしれない。
文/藤田 香(日経エコロジー)
京都議定書の第1約束期間では、日本は温暖化ガスの6%削減のうち3.8%を森林吸収で賄う計画だ。国際ルールで温暖化ガスの吸収源として認められているのは、「森林経営」「植生回復」「農地管理」「放牧地管理」の4つ。各国が自由に選択できることになっており、第1約束期間で日本は、「森林経営」と「植生回復」を選んだ。吸収目標量は森林経営で4767万t、植生回復で28万t(目標達成計画の改定案では46万t )だ。
カナダやデンマーク、ポルトガル、スペインは「農地管理」も選択している。しかし日本は、「農地がどの程度炭素を固定するか科学的知見が乏しかったため、選択しなかった」(農林水産省環境バイオマス政策課の村山牧衣子課長補佐)。
というのも、農地はむしろ温暖化ガスの排出源のイメージが強かったからだ。水を張った水田では稲わらなどの有機物が嫌気性発酵し、メタンを発生させる。また、農地に化学合成肥料や稲わらをすき込むと、土壌中の微生物の働きで一酸化二窒素が発生する。いずれも温暖化ガスだ。
ところがここにきて、農地がCO2を吸収・排出するメカニズムが徐々に解明され、国連のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)第4次評価報告書も、「森林や農地の吸収は有効な削減手段」と記述した。
土壌中に投入された有機物は分解されてCO2を排出するが、一部は分解されにくい炭素化合物(腐植物質)となって土壌中に蓄積される(下の図)。とりわけ不耕起栽培だと、土壌のかく乱が減り、腐植物質として残りやすいという。

●農地における炭素固定
出所:農林水産省
しかし、「高温多湿の日本では不耕起栽培にすると雑草が増える。農業生産が落ちるので、現実的ではない」(村山課長補佐)。そこで農水省が検討しているのが、農地に投入する有機物の中身を見直し、その投入量を増やす手法。一酸化二窒素の発生につながる化学肥料に代えて堆たい肥ひを増やす。稲わらのすき込みを完熟堆肥に代えて、メタン発生を抑制する。
こうした農地管理によって770万tのCO2を吸収できると試算しており、2008年1月の検討会で試算結果をさらに詳しく議論する予定だ。
第1約束期間では森林経営による3.8%削減の達成も困難を極めている。これまでの森林整備に加え、2007~12年度にさらに毎年20万haずつ追加的間伐を進める必要に迫られている。新たに農地に期待をかける背景には、限界に達した森林経営による吸収源対策の突破口にしたいとの思いがある。

●第1約束期間のCO2吸収源
温暖化ガスの吸収源として、日本は4つの選択肢のうち2つを選んだ。ポスト京都では「農地管理」の選択も視野に入れる

上記の記事「ポスト京都で農地を吸収源に稲わら管理などでCO2770万t[温暖化対策]」は、『日経エコロジー』2008年2月号に掲載された特集です。なお、記事中に記載した内容については、『日経エコロジー』2008年2月号掲載時の内容となっております。
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