山を保全する「大橋式路網」導入
第1号開通を祝う渡り初め
小菅村で整備の始まった作業路網の第1号は、山梨県道18号沿い、鶴峠の近く。テープカットセレモニーには、小菅村の廣瀬文夫村長も公務を終えて駆け付けた。
挨拶にあたり村長は、まず、今回導入された「大橋式水源かん養路網」は、「水源に優しく、保全もできる新しい路網」と説明した。これによって林地を保全し、保水機能を高めながら間伐を促進。さらに間伐材を有効活用することで、村の新たな産業の活性にもつなげていきたいと話した。また、「手入れの行き届いた美しい山にすることが、林業経営の再生にもつながる」とし、全国のモデルとなるよう、皆で成功に導いていきたいと締めくくった。

テープカットの様子。写真左から、北都留森林組合副組合長 守重伴勇氏、東京電力環境部長 影山嘉宏氏、多摩川源流自然再生協議会会長 宮林茂幸氏、小菅村村長 廣瀬文夫氏、小菅村村会議長 古家悦男氏、小菅村名誉村民 加藤亀吉氏
参加者全員での記念撮影のあとは、いよいよ“渡り初め”だ。実際に道の整備にあたった森林組合員の解説を聞きながら、全長363mの作業路を歩く。
先にも触れた通り、傾斜のきつい源流域の山で木の手入れをするには、路網整備が欠かせない。道を作るには当然、山を切らなければならないが、戦後の植栽できめ細やかに植えられた人工林は山の奥深く、尾根にまで続いている。安易に山を切れば、森林保全のための道が、かえって山腹を傷めることになりかねない。これまで小菅村で作業路の整備を避けてきたのはそのためだ。
一方、大阪府の指導林家である大橋慶三郎氏が提唱する「大橋式水源かん養路網」には、随所に“水を散らす”仕組みがある。関東での敷設例は珍しいが、「50年間1度も山を荒らしたことがない」という同氏の実績が導入の決め手になった。「源流を守りたい」という人々の思いに応え、大橋氏自らが路網を選定。何度も山を往復し、調査は慎重に進められた。
完成した作業路に入っていくと、まず目に入るのが、路肩に組まれた丸太だ。大橋式では、2tの四駆ダンプで入っていくことを前提に道を整備する。タイヤが端まで来ても組み木があれば崩れないだけでなく、上から力がかかることでかえって土が締まり、安定する。

路肩の組み木には、道を造るときに切った木を使う。横に1本、それに対して垂直に長さ2mの木を1m間隔で打ち込み、八寸釘(約24cm)で固定

組み木の上から土をかけて完成。土で覆うと植物が生えやすくなり、木が腐って糊の役割を果たすため、崩壊を防げる
さらに進んでいくと気付くのは、比較的、傾斜が緩いことだ。大橋式では、等高線に沿って道を敷く。登りやすいだけでなく、雨が降っても尾根から横に拡水され、水が1カ所に集中しない。林地を崩さないためには、谷に水を集中させないこと、溜めないことが重要だ。進行方向だけでなく、道の横方向にも傾斜を付け、山から谷へと排水・分水をうながしている。

尾根から谷に向かって傾斜させた道。水が分散して流れるようになっている。カーブの内側が高いので、車で走るときもタイヤが横転せず安定する。勾配は20%、道幅は2.5mが基本だが、下りやすいようにカーブではやや広めに取る
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