枝打ち名人による
デモンストレーションも
住民講師の中には、社団法人 国土緑化推進機構が選定する「森の名手・名人」として2005年に枝打ち名人に選ばれた木下景利さんも参加していた。40年ほど前から枝打ちを始め、山梨県認定の林業士として県内各地で講習も行っている。この日もその技術を披露してくれた。

枝打ち名人、木下景利さんによるデモンストレーション。10数mもあるヒノキに軽々と上り、上から枝を打ち払いながら下りる。間近に見る“名人の技”に、参加者からは思わず感嘆の声と拍手が上がった

木下景利さんが枝打ちを終えたヒノキ
木下景利さんは無節の優良材生産に取り組んでいるが、最近では無節でさえ使われなくなっているという。これは建築手法の変化による影響だ。従来、多く見られた真壁(しんかべ)という工法では、柱の表面が見える。だが、大壁(おおかべ)という柱を隠す工法が広まり、節の有無は重要ではなくなった。建築メーカーは、国産材よりも大量に効率良く仕入れられる外材を選ぶようになっている。
しかし今、価格だけでみれば外材よりも国産材の方が安い。それでも外材が優勢なのは、大量生産が可能だからだ。米国やカナダなど、傾斜の緩い広大な土地で効率良く木を育てられる国に比べると、日本の林業は採算性が低い。
例えば今回の実習地である鹿倉山について、小菅村で多摩川源流研究所の所長を務める中村文明氏は、こう話す。「『ししくら』という名の付いた土地は、獣がいて狩場となるようなところが多いですね。また、山の両側が厳しく、急峻な場所によく見られる地名です」。
実際、実習地までの道のりは険しい。山の手入れのたびに、徒歩で往復2時間。しかも木を運び出すとなると大変な労力を要する。日本の林業はその地形からいずれも似たような状況にあり、外材のような大量生産型の手法は難しい。

小菅村 多摩川源流研究所 所長 中村 文明 氏

手入れされない森には光が入らず、土壌が育たない。保水能力がないばかりか、大雨や台風で表土が流出して根が表れてしまった木は、倒れることもある
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