荒れた人工林を再生する
多摩川源流大学の取り組み
東京から西へ向かった先、奥多摩のさらに向こうに、小菅村(山梨県)はある。東京都民には水源としてもなじみ深い、多摩川の源流域に当たる山間の村だ。かつては林業を主力産業としていたが、戦後のエネルギー転換によって、それまで家庭用熱源として使用されてきた炭やまきはガスを中心とした新しい“リソース”へ移行して売れなくなった。高度経済成長で需要の伸びた建築材も、安価な外材に押されて国産材市場は縮小していった。

国道139号沿いにある小菅村入り口の看板
小菅村に限らず、木材価格の低迷によって日本では全国的に林業離れが続いている。しかし、林業に携わる人が減ることは、実は、森の手入れがされなくなることでもある。森林の40%を占める人工林は今、そのほとんどが荒廃しているのだ。
このまま山の管理をする人がいなくなり、森が荒れていくと、どうなるか――。
一例だが、近年、台風による土砂崩れの被害が増加傾向にある。これは単なる“自然災害”ではない。これまで農山村の人々によって守られてきた森林が、林業が成り立たないなどの理由で手入れが行き届かなくなっているためだ。
植林後、間伐をしなければ、木々はうまく根を張れない。野放図に伸びた枝は光をさえぎり、その下に生息する動植物が減少する。微生物も育たなければ土壌もできず、雨で表土が流れれば根はさらに弱くなる。それでは土砂崩れを防ぐ力があるはずもなく、台風でドミノ倒しのように倒れることさえある。
こうして山の一部が崩れ始めると、人工林だけでなく周辺の天然林にも影響を及ぼし、山崩れや土砂の流出による被害が拡大していく。奥山の問題が、流域の都市部に住む人々にも影響を与えるのだ。逆にいえば、山を守る人々がいて、健全な森林があるからこそ、都市部でも安心して生活できる。林業の衰退による森林の荒廃は、都市住民にとっても人ごとではない。
最近では地球温暖化問題の対策として、CO2(二酸化炭素)を吸収させるために木を植えようという取り組みが盛んだが、本当に大切なのは“植えた後”なのである。

小菅村の入り口から見える風景。一見、美しい緑も、山に詳しい人が見れば枝の伸び具合や木の種類などから荒れているのが分かるという
こうした問題に詳しい東京農業大学 地域環境科学部 森林総合学科の宮林茂幸教授は、「安全で継続的な社会を実現するには、生産者と消費者の連携、すなわち“上流と下流の連携”が重要になってきます」と語る(詳細はインタビュー前編・後編参照)。同大学では、2006年、小菅村と共同で「多摩川源流大学」を立ち上げた。森林再生にとどまらず、村に伝わる“源流の知恵”を「源流学」として体系化するほか、地域活性化も視野に入れている。
今回はその取り組みの中から、2007年9月15日~17日の3日間に行われた「森林体験実習」の様子をリポートしていこう。実際に森林調査や間伐、間伐利用を体験するという源流大学ならではのプログラムだ。

実習中の学生を見守る宮林教授
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