グローバルな持続可能な社会は
ローカルな住宅地から始まる
以上が実際に行われたヴォーバン住宅地のエネルギーコンセプトの内容である。こうした対策によって、ヴォーバン住宅地では6割以上の温室効果ガスの排出を削減できる見込みとなっている18。
しかし、ここまで家屋の省エネ技術が進んだ現在では、欧州各地でパッシブハウスが標準化された住宅地区が計画され始めている。そうなるとソーラー温水器との組み合わせで、暖房・給湯施設のない住宅地が登場する可能性は高い。そのとき、ドイツ環境省が指し示しているように二酸化炭素の排出量を“2050年までに半減以下”が実現されるであろう。


ドイツ連邦環境省が委託し、ドイツ航空・宇宙研究センター(DLR)などが算定した「長期エネルギーシナリオ19」。上の棒グラフは下の表組を元に作成したもので、縦軸は一次エネルギー供給の値を表す。単位はPJ/年。ここでは、温室効果ガスではなく、一次エネルギー供給によって排出される二酸化炭素のみ試算している(2000年比で2030年までに42%削減)。このシナリオは、「省エネ」「エネルギーの高効率化」「建物のパッシブソーラー建築」が急速に促進され、再生可能エネルギーが最大限に拡大することを前提としている。

日本の資源エネルギー庁が委託し、総合資源エネルギー調査会が試算した数々の感応度分析のうち、もっとも楽観的に省エネルギーが進展した場合の長期エネルギー見通し20。縦軸は最終エネルギー消費で、単位は石油換算値百万kℓ。図中の色分けは、その感応度分析のなかで一次エネルギー供給のエネルギー源別の割合が示されていたものを、その割合に応じて筆者が組み込んだもので、正確な最終エネルギー消費のエネルギー源割合を示すわけではない。およその傾向と見ていただければ幸いである。さらにこの見通しでは、エネルギー起源の二酸化炭素排出が2030年までに19%削減される(2000年比)
追記: 日本には、残念ながら公的な機関が策定した、いわゆる国際的に通用する『エネルギーシナリオ』『エネルギービジョン』というものが存在しない。様々な要因を見込んで現状を延長、分析する『見通し』があるだけである。これについては本レポートでは触れないが、市民エネルギー調査会はシンポジウム用の資料「持続可能なエネルギー社会を目指して」のなかで建設的な意見を述べているので、興味のある方は参考にされるとよいだろう。
18 本レポートでは交通部門についての記述を省略した。ヴォーバン住宅地ではカーフリーコンセプトなど、各種のいわゆる“環境に優しい交通手段”の促進と、マイカー利用の削減が意欲的に行われている。ただし、この6割削減という数字は、交通部門を含む数字ではなく、ドイツで“エネルギー部門”と呼ばれる住宅地の建物で消費される熱と電力からの温室効果ガスを指す。これはフォーラム・ヴォーバンのワーキンググループ・エネルギーの試算による。
19 [Leitstudie 2007 „Ausbaustrategie Erneuerbare Energien“], Dr. Joachim Nitsch & Deutsches Zentrum fÜr Luft- und Raumfahrt „Systemanalyse und Technikbewertung“, Stuttgart, 2007:http://www.bmu.de/files/pdfs/allgemein/application/
pdf/leitstudie2007.pdf
20
▼参照サイト:
『2030年のエネルギー需要展望』、総合資源エネルギー調査会、2005
市民エネルギー調査会
シンポジウム用の資料「持続可能なエネルギー社会を目指して」
村上 敦(むらかみ・あつし)氏
渡独後11年間に渡って、ドイツとフライブルク市の環境政策や取り組み、とりわけ「交通」や「まちづくり」について調査を続け、執筆活動を行う。NPO法人エコロジーオンライン「フライブルクレポート」、日経BP社「未来生活」、環境省「Re‐Style」などのWEB媒体を始め、各種新聞、雑誌などにおいて執筆活動を行う。兼業主夫でもある。著書に『カーシェアリングが地球を救う』(洋泉社)、オンライン&オンデマンド出版:『フライブルク市のエネルギー政策(EOL-WAYS)』、翻訳書に『エコロジーだけが経済を救う』(洋泉社)がある。
また、12月初旬には、環境先進国ドイツで最も野心的なサステイナブルコミュニティを実現した住民たちの挑戦をつづった著書『フライブルクのまちづくり-ソーシャル・エコロジー住宅地ヴォーバン-』(学芸出版、税込価格2730円)が発売予定。徹底した省エネと自然エネルギーの利用でエネルギー消費とCO2排出を激減させ、画期的なマイカー抑制策で車のない街を実現、数々の輝かしい取り組みを住民主導で成功に導いた軌跡に迫る。
著者のHP
「環境ジャーナリスト・村上敦のページ」
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