
都市環境学部
三上 岳彦 教授
分散する緑をつなげよう
三上教授は、グリーンチェーン推進ネットワークの代表も務める。
「都心部の気温は過去20年間で、100年に換算すると5℃上昇したといわれています。かなり上昇率が上がってきています」と、三上教授は話し始めた。
このままいくとどうなるのか心配されるが、ヒートアイランドの緩和策で一番効果が高いのは緑だと三上教授は強調する。「緑地の効果についてはシミュレーションで分かっています」とのこと。
三上教授は気候変動や都市気候の専門家で、ヒートアイランドの研究を中心に行っている。
幸い都心には、新宿御苑や皇居、明治神宮などの大規模な緑地がある。その大きな緑地をより活かすには、それを“つなげる緑”が重要だと三上教授は指摘する。
「小さな緑であっても、“つながっている”ことが重要です」と三上教授は述べる。
具体的に、新宿御苑や明治神宮と、その周辺の気温の分布と変化の観測結果を図やデータを見せながら説明を進めた。
「気温の分布と変化を観測しますと、大きな緑地から夜間、冷たい空気が外に出ているのが分かります。これを『にじみ出し現象』と呼びます。明治神宮と新宿御苑の『にじみ出し』が明け方近くにつながっている状況が確認されています。重要なのは、その『にじみ出し』を“つなげる緑地”です」と三上教授は話す。
例えば表参道の並木道は、明治神宮からの「にじみ出し」を外につなげる役目を果たしているという。
三上教授はまた、環境省の調査で皇居のクールアイランド効果について検証するため、昨年(2006年)に続き、皇居内での気温観測を行った内容を紹介した。観測の結果、皇居内の今年8月の気温は、周辺市街地より平均で1.8℃低く、また周辺市街地に向かって、昼間は風による冷気の移流、夜間は冷気のにじみ出しが観測されたという。
三上教授は、「分散する様々な規模の緑地をつなげてクールアイランドを拡大することで、都市のヒートアイランド現象を緩和することができます」と話す。
そして、グリーンチェーンの役割を果たすものの候補として挙げられるのは、(1)街路樹や並木道などの緑道、(2)小規模緑地(校庭、公園、神社)、(3)屋上緑化、壁面緑化、緑のカーテン――などである。
「緑化できるスペースを見つけて、少しでもグリーンチェーンを広げていくことが重要です」と三上教授は強調した。

首都大学東京 都市環境学部 三上 岳彦 教授
チョンゲチョン(清渓川)プロジェクトで、ソウル市もクールダウン
続いて、韓国ソウル市のチョンゲチョン(清渓川)プロジェクトについて、事業前と事業後の写真を見せながら説明した。このプロジェクトは、高架道路を撤去し、川を復元させた国家事業である。事業費約400億円をかけ、2003年に始まった同事業は2005年に終了した。
三上教授は、「川のほとりに緑を植えたことで、風も通り、温度がかなり低くなりました。事業前と後の熱画像にその効果がはっきり表れています」と指摘した。
総合司会を務めた東京電力の矢野康明氏が、最後に会場からの質問を募ったところ、流山市でまちづくりを担当している伊藤さんが、「グリーンチェーンを進めていますが、暑いときは皆がんばるのですが、冬にそのモチベーションを持続させるにはどうしたらいいのでしょうか」と質問。
それに対し三上教授は、「緑があることで冬は暖かく過ごせます。緑は色々な意味で都市の環境改善に役立つはずです」とこたえた。
また、東京都も、公園を核にして緑地を広げることでクールアイランドを実現させたいと考えていることが紹介され、今後の取り組みの拡大に期待を抱きつつ、グリーンチェーン推進ネットワーク設立1周年記念シンポジウムは終了した。

首都大学東京 都市環境学部 三上 岳彦 教授
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