省エネ・省資源の新しい光 テレビや照明で商品化間近
文/吉岡 陽(日経エコロジー)
夏の風物詩、ホタル。それと同じ原理で光を放つ、「有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)」と呼ばれる技術を応用したテレビや照明が実用化されつつある。省エネと省資源を兼ね備える次世代技術が花開く。
有機ELは、特殊な有機化合物が電気的なエネルギーで発光する現象のこと。この技術を応用することで、厚さがわずか数mmで、液晶やプラズマ以上に高画質で省エネ性能の高い薄型テレビや、蛍光灯の2~3倍の効率を誇る超省エネ型の照明などが作れる(3ページの表を参照)。
2007年は商品化元年
厚さ数mmの壁掛けテレビも

●有機EL照明パネル
将来的には蛍光灯の2~倍の発光効率を実現し、照明の主流になる可能性がある。写真は三菱重工業の試作品
2007年は、有機ELの商品化「元年」になりそうだ。4月半ば、ソニーと東芝が相次いで有機ELテレビの商品化を発表した。ソニーは年内に11インチのモデルを有機ELテレビとして世界で初めて発売する。並行して開発している27インチも数年以内の商品化を検討する。サイズは未定だが東芝は2009年に発売する。
一方、照明では3月にコニカミノルタホールディングスが、3年以内の量産化に向けて米ゼネラル・エレクトリック(GE)と提携。4月には、三菱重工業が2009年に量産設備を販売すると発表した。

●ソニーが年内に発売する有機ELテレビ
年内に発売する11インチは厚さわずか3mm。27インチも数年以内の発売を検討する
こうした動きに呼応して発光材料 を手掛ける出光興産は4月、世界最大級の供給能力(年産約2t)を持つ新工場を稼働させた。
それではディスプレーを例に有機ELの仕組みを見てみよう(2ページのイラスト)。有機ELディスプレーは、極薄の層を幾つも重ねたサンドイッチ構造をしており、陰極と陽極に電圧をかけて、両側から電子と、正孔(電子が抜けた穴)を注入する。
電極から注入された電子と正孔は、有機化合物で作られた輸送層を通過して、光の三原色を放つ3種類の有機化合物(発光材料)で構成される発光層で結合する。結合する際に、エネルギーが放出されるため、周りの発光材料の分子は「励起(れ いき)状態」と呼ばれる、高いエネルギーを持った状態になる。そこから再び安定した状態に戻る際に、光と熱の形でエネルギーを放出する。分子が励起状態から元に戻る際に光を出す現象を「ルミネッセンス」という。ホタルは体内でこの反応を繰り返している。ディスプレーや照明では、有機化合物を使って電気的にこの現象を起こすため、有機ELと呼ばれる。原理的には発光ダイオード(LED)に近く、O(Organic)LED(オーレッド)とも呼ばれる。

●曲がるディスプレー
ソニーが開発した、世界初のフルカラー表示が可能な曲がる有機ELディスプレー
写真提供/ソニー
3色の発光材料を縦に重ねるなどの違いはあるが、基本的な仕組みは照明も同じ。太陽光と同様に光の三原色をすべて備えており、設定次第で色合いを変えられる。例えば、朝と夕方の日射を再現し、化粧栄えを確認できる化粧台なども作れる。
有機ELの大きな特長は、その薄さだ。パネル自体の厚みは約1mm。そのほとんどはガラス基板が占めており、それ以外の部分は1µm(µ:マイクロは100万分の1)程度しかない。液晶テレビの場合、画面の裏側にバックライト(蛍光灯の一種)を並べて光らせている。このため、薄型テレビとは言いながら厚さを数cmより薄くできない。
これに対し有機ELは、極薄の発光層自体が光るため、筐体(きょうた い)を含めても数mmに抑えられる。研究段階だが、ソニーが5月に発表した世界初のフルカラー表示が可能な曲がる有機ELディスプレーの厚さは、わずか0.3mm。本当の「壁掛けテレビ」を実現できるだけでなく、材料を大幅に減らせるため、省資源になり製造段階のエネルギー消費も抑えられる。
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