自主行動計画が事実上、協定電力に 鉄鋼は“キャップ&バイ”へ
文/馬場未希(日経エコロジー)
産業界の自主的な温暖化対策の進ちょくを点検する「フォローアップ」で目標の引き上げが相次いだ。達成が厳しい電力と鉄鋼は大量の排出権獲得に動いている。自主計画ながら政府の管理は厳しくなっている。
日本経団連加盟の業界団体などが自主的に温暖化ガス削減の目標と対策をまとめた「自主行動計画」。同計画では業界団体ごとに、2010年度をめどに、CO2排出量や生産高当たりのエネルギー消費量などによる削減目標を定めている。
この進ちょくを政府が点検する「自主行動計画フォローアップ」で、1月29日までに33業種中、電機電子4団体など8業種が目標を引き上げた。引き上げ効果をCO2の量に換算すると合計約284万tに達する。
「3年以上連続して達成した業界は、目標の引き上げをぜひ、検討されたい」。政府はこれまでに開いた会議の冒頭で繰り返し強調した。事前にも業界団体に働きかけている。
政府は今回、例年になく強硬な姿勢を貫いている。フォローアップは今年度で9回目。7~9年連続して目標達成している業界も多いが、昨年度までに目標を引き上げたのは、日本製紙連合会と板硝子協会の2業種しかなかった。
今回、政府が目標の引き上げを強く求めた背景には、京都議定書の第1約束期間が始まる2008年を前に、2005年度の日本の温暖化ガス排出実績(速報値)が基準年比8.1%増えたという現実がある。

注:「削減目標」は90年度比の目標(6は96年度、8は95年度)。
1は実質生産高CO2原単位、2、3はCO2排出量、4①はエネルギー使用量、4②、5、6、7、8はエネルギー原単位
「排出権購入は各社の分担で」
政府は自主行動計画の目標達成が厳しい業界に対し、京都メカニズムを活用してCDM(クリーン開発メカニズム)などから発行される排出権の購入を求めている。
既に電気事業連合会と日本鉄鋼連盟がこれに応じて排出権の購入を進めており、今回はこれまでの購入状況と今後の計画を報告した。電事連は2010年度までに約3000万t、鉄連は同約2800万tを取得するめどをつけた。
電事連の約3000万tの内訳は、各社が個別にCDMや日本温暖化ガス削減基金(JGRF)などの炭素基金に出資して獲得を進めたもの。一方、鉄連は、鉄連自身がJGRFなどの炭素基金に出資するほか、新日本製鉄が単独でCDMの排出権を購入する分を含めた。業界団体の中で、排出権購入にかかる費用を加盟企業にどのように割り振るかが注目されているが、鉄連は「各社の役割分担の中で、各社が必要に応じて負担する」とした。
日本経団連は、自主行動計画の達成のために取得した排出権は、無償で政府に引き渡すことを認めている。つまり、電力と鉄鋼にとって自主行動計画は事実上、政府との協定といえる。加えて、政府の求めに応じて削減目標を引き上げていけば、今後、他業界にも排出権の購入による達成の動きが出てくる可能性もある。
日本経団連は、温暖化ガスの排出規制の下での排出権取引(いわゆる“キャップ&トレード”)に反対を表明している。ただ、その“応用例”として、事実上の排出規制の下、未達成分を海外から購入した排出権で賄う“キャップ&バイ”が、産業界に“導入”されつつあるといえる。

上記の記事「リポート:自主行動計画が事実上、協定電力と鉄鋼は“キャップ&バイ”へ」は、『日経エコロジー』2007年3月号に掲載された特集です。なお、記事中に記載した内容については、『日経エコロジー』2007年3月号掲載時の内容となっております。
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