リポート:日米とEUが温暖化防止で戦略表明 将来の温暖化対策巡って鞘当て
文/馬場未希(日経エコロジー)
日米とEU(欧州連合)は1月、エネルギーと温暖化防止にかかわる戦略を立て続けに発表した。EUは2020年までと長期の目標を盛り込み、2013年以降の国際的な枠組みづくりにおける主導権争いに踏み込んだ。
1月9日、甘利明・経済産業大臣はサミュエル・ボドマン米エネルギー長官と会談し、エネルギー安全保障と温暖化対策での協力に合意した。
原子力発電を推進するための協力を打ち出すとともに、石炭ガス化技術や、発電所などから排出するCO2を地中に封じ込める「CO2地中貯留」技術の開発を共同で進める。ほかに省エネ事例の情報交換や、メタンハイドレート、木質バイオマスの推進などを挙げた、技術重視の内容だ。

注:「APP」は「クリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップ」、「EU ETS」は「欧州排出権取引制度」の略称
この合意は、2013年以降、京都議定書の第1約束期間の終了後(「ポスト京都議定書」とも呼ぶ)の温暖化対策のあり方を巡る両国の主張に沿うものでもある。
米国は2001年に京都議定書から離脱した後、温暖化ガスの総量による削減目標を拒み、CO2削減技術の開発による温暖化対策を独自に進めている。日本は温暖化ガス削減効果を高めるには、米国や、中国・インドなどCO2を大量に排出する途上国が参加しやすい、技術開発や移転を中心にした方法を探るべきとしている。
こうした両国の主張は、2013年以降も温暖化ガスの削減目標を定めることを主張するEUと、真っ向から対立する。2005年に始まった将来の温暖化対策のあり方を巡る国際的な交渉の場では、主張を異にする国の間で主導権争いが続いている。
日米協力が合意した翌10日、EUも挑戦的な目標を公表した。欧州委員会は、2020年までに温暖化ガス排出量を20%削減する目標を盛り込んだ、環境とエネルギーに関する政策案をEU加盟国に提案した。
自然エネルギーの推進や、CO2地中貯留技術の実用化などで目標を達成する。また、原子力発電は温暖化の解決に重要な役割を果たすとし、使わない場合は、CO2排出の少ない電力による代替を求めた。

バローゾ欧州委員会委員長は1月10日に発表した文書に、「この政策案には、我々がリーダーシップを執るという意欲を込めた」というコメントを寄せた
加えて、「2013年以降の温暖化対策が国際的に合意されるなら、2020年までに先進国全体で温暖化ガスを30%削減すべき」とした。これまでの主張の具体案を、EU各国政府と、国際社会に示した格好だ。
一夜明けた11日、安倍晋三首相はベルギー・ブリュッセルでジョゼ・マヌエル・バローゾ欧州委員会委員長と会談し、政策案への協力を求められた。安倍首相は、「削減目標については経済との両立も重要」と述べるにとどまったという。
日本は、第1約束期間に厳しい削減目標を負ったことで、排出権の購入に数千億円を投じる。2013年以降も同じ轍を踏むのは避けたい日本が、交渉をけん引する意欲を見せるEUに対し、実効性のある温暖化対策と国益を両立できるか、政府の交渉力が試される。

上記の記事「リポート:日米とEUが温暖化防止で戦略表明 将来の温暖化対策巡って鞘当て」は、『日経エコロジー』2007年3月号に掲載された特集です。なお、記事中に記載した内容については、『日経エコロジー』2007年3月号掲載時の内容となっております。
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