森から運ばれる海の鉄が
エネルギー問題と食糧問題を解決する
石油をはじめとする化石燃料には限りがある。化石燃料を節約し、二酸化炭素(CO2)排出量を削減するためにも、カーボンニュートラルなバイオ燃料の活用は重要な課題だ。
原油価格の上昇が続く今、海洋バイオエタノールには世界のエネルギー産業も注目している。

牡蠣の森を慕う会
代表 畠山重篤氏
石油メジャーのロイヤルダッチシェルでは、北米沿岸に生息するジャイアントケルプからエタノールを取り出す試験プラントをハワイに建設中だ。
日本でも三菱総研などが中心となって技術開発を進めており、2008年度からは水産庁が、2002年に閣議決定されたバイオマス・ニッポン総合戦略」の一環として海藻バイオマスからバイオエタノールを取り出すための研究開発費を確保している。
海藻のバイオエタノール化には、実は簡単ではない。セルロースを一度溶かして発酵させる必要があり、そのための専用の設備が必要となる。技術的にクリアーできても、実際の製造ではなかなか進まないが、原油価格の天井が見えない今、海洋バイオエタノールは国内に石油資源を持たず、周囲を海に囲まれた日本がエネルギーを確保するためのひとつの手段となる可能性がある。
海藻をバイオ燃料として継続的に活用するためには、「山から鉄を含んだちゃんとした水が運ばれてこなくてはいけない」(畠山氏)。日本近海は水が汚れているといわれて久しいが、言い換えればそれは富栄養化が進んで窒素やリンが潤沢に含まれているということだ。そこに鉄(鉄イオン)があれば、海藻が育つ環境が出来上がる。
逆に、窒素やリンだけがあっても、鉄(鉄イオン)がなくては、プランクトンは育たない。
米国のモス・ランディング海洋研究所のジョン・マーチン博士が、プランクトンの少ない南極海の水にイオン化した鉄をまいてみる実験をしたところ、プランクトンが育つことが確認できた。マーチン博士の試算によると、30万トンの鉄(鉄イオン)を南極海に散布することで、年間に世界で排出される二酸化炭素の半分程度が吸収されるという。
「護岸建設時に鋼矢板(こうやいた)を海岸に打ち込むと、半年で汚れていた海底がきれいになると、昔からゼネコンの人たちの間では知られていた。はやっているすし屋の側溝はいつもきれいだが、これは毎日包丁を研ぐことで鉄と炭が流れていくから。鉄橋の下ではどこでも蜆(シジミ)がとれるが、これは車輪で削られる鉄が下に落ちて川に供給されるから。島根の宍道湖の蜆は、たたらの炭と鉄で育っている。そういう目でものごとを見ていると、色々なことが見えてくる」と畠山氏は静かに語る。

気仙沼でも、漁場の回復と資源利用を目的としたコンブの養殖が盛んである
海に鉄(鉄イオン)を供給することで、沿岸の水がきれいになり、貝が育つようになる。「海がきれいになり、沿岸の貝や魚が安く、おいしくなれば、自然に米と魚を食べるようになる。輸入飼料で育てる肉の消費を減らし、魚中心の食生活を促進することにもつながるはず」というのが畠山氏の主張だ。
1トンの肉を生産するために、1000倍の重さの穀物飼料が消費されている。そして穀物飼料を作るために、世界中で森林が破壊されている。「森は海の恋人」は、地球温暖化問題解決のキーワードにもなる。
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