教科書掲載をきっかけに運動は全国へ
ついに新月ダム計画中止が決定
「牡蠣の森を慕う会」の活動は、学校教科書にも取り上げられている。日本経済新聞の土田芳樹仙台支局長(当時)の取材を受けたことがきっかけで、13年前に、日経新聞の文化欄に畠山氏が寄稿した文章を見て、教科書の出版社から執筆依頼がきた。
「最初にその話を聞いたときにはあわてたが、土田さんからは『日経新聞掲載の記事が国語の教科書に取り上げられるのは初めての快挙だから、ぜひやってくれ』と言われて引き受けた。半年ほどかけて執筆に取り組んだが、教科書は約束と決まり事が多くて大変だった。書くのは本業じゃないし、『かき(カキ)』と『かく(書く)』とじゃ、えらい違いだと思った」と畠山氏は笑いながら当時を振り返る。
「森は海の恋人」のキャッチフレーズ誕生時に力になってくれた熊谷龍子氏からも、「あなたの経験をそのまま、気負わず書けばいい」とアドバイスを受けて書き上げた文章は、中学校3年の国語教科書に掲載された。
教科書に掲載されたことで、「牡蠣の森を慕う会」の活動はさらに知られることになる。そして参考書や、大学入試問題にも畠山氏の文章が取り上げられ、社会科の教科書にも「森の養分が海へ流れ込むことの大切さ」が紹介された。それまで、概念そのものがなかった「森と海のかかわり」が教育の現場で教えられることになったのだ。
体験学習を希望する学校にとっても、「国語の教科書に載っているあの場所です」と言うことで、教育委員会からも認可を受けやすくなるというメリットも生まれた。

畠山氏の文章は中学3年「国語」の教科書に掲載された(写真上:教育出版の教科書より)。また、「牡蠣の森を慕う会」の活動は小学5年「社会」の教科書に取り上げられた(写真下:同じく教育出版の教科書より)
こうして全国から注目されたことは、「新月ダム計画の中止」という大きな成果につながった。
「全国から注目されているところにダムを作って、それで海がダメになったら、行政の“メンツ”はまるつぶれになる。だからそんなところにダムを作るな、という命令が国から出たのだと思う」(畠山氏)。
「大川にダムが出来たら気仙沼の海は死んでしまう」という漁師の思いから始まった運動は、ついに2001年、当初の目的だったダム計画の中止を勝ち取ったのだ。
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