このページの本文へ
ここから本文です

木よりも人の方が早く育つ
環境教育にマッチした漁師のポジション

牡蠣の森を慕う会 代表 畠山重篤氏

牡蠣の森を慕う会 代表 畠山重篤氏

「漁師が森に木を植えることばかりが強調されている感があるけど、我々の活動の多くは子供たちへの環境教育」と畠山氏は強調する。

きっかけとなったのは、大川上流にある小学校の先生と意見交換をしたときに、「子供たちが海に接する機会がほとんどない」という話題を聞いたことだった。河口域にいてそこで長年住んでいると、川から流れてくる様々なものを見ることで、上流の人々の生活が見えるのだ。同時に、それらを通して海の生き物も見ることができる。

「わずか25キロメートルしか離れていないのに、ほとんどの子供たちにとって、海は年に1回か2回、夏休みに海水浴に連れて行ってもらうだけの場所なんでしょう。日常生活で海を“思う”ことはほとんどないということを聞いて、これは何とかしなければと思った」(畠山氏)。

持ち前の行動力が畠山氏をすぐに動かした。第1回植樹祭の翌年となる1990年5月、室根村の折壁小学校の子供たちを体験学習に招待したのである。

プランクトンネットで水をすくって子供たちに一口ずつ飲ませ、カキが毎日食べている水を実際に味わってもらった。カキは沿岸の川に流されたものが混ざった海の水を吸収して育つ。つまりそれは、上流に住む人が流したものを飲むということだと身体で感じることである。まさに、毎日海の生き物と暮らす漁師だからこそうまれたアイデアといえよう。

畠山氏の説明に聞き入る、体験学習をする子供たちの様子

畠山氏の説明に聞き入る、体験学習をする子供たちの様子

「体験学習を終えた子供たちの作文には、『朝シャンで使うシャンプーの量を半分にした』『流しの穴に使い古しのストッキングを入れてゴミを取ってもらうようにお母さんに頼んだ』『畑に農薬と除草剤をできるだけ使わないようにお父さんと話した』といった、川の水を意識する様子が書かれていた。これを読んで、漁師のポジションは環境教育にとてもマッチしているとあらためて確信しました」と畠山氏は語る。

この試みがマスコミに紹介されて、体験学習を希望する学校が増えてきた。「上流で農薬やゴミを川に流すと海に悪い」というと当たり前のことに聞こえるが、日常生活で海を“思う”ことがない人にとってはなかなか思い至らない。体験を通して川の流域の子供の意識が変わるということは、大人が変わり、ひいては行政が変わるということだ。

「山に木を植えても育つのに50年はかかるが、人は20年で育つ。人を育てる方が早いんです。だから教育が大切」と畠山氏は強調する。

ここから下は、過去記事一覧などです。画面先頭に戻る バックナンバー一覧へ戻る ホームページへ戻る

記事検索 オプション

SPECIAL

日経BP社の書籍購入や雑誌の定期購読は、便利な日経BP書店で。オンラインで24時間承っています。

ご案内 nikkei BPnetでは、Internet Explorer 6以降、 Safari 2以降、Opera 8以降、Netscape 8.1以降またはHTML 4.01/CSS level 1, 2をサポートしたWebブラウザでの閲覧をお勧めしております。このメッセージが表示されているサポート外のブラウザをご利用の方も、できる限り本文を読めるように配慮していますが、表示される画面デザインや動作が異なったり、画面が乱れたりする場合があります。あらかじめご了承ください。

本文へ戻る