安心院で結んだ心の絆が
“お客さん”を“親戚”に変える
決して交通の便が良いとは言えない安心院。取材を終えた編集スタッフは、翌日の朝、ミヤ子さんに車で近くのバス停まで送っていただくことになっていた。ところが、実はその日はお孫さんの運動会があるという。結局、バスの時間まで間があったため、途中までスタッフも一緒に保護者の応援席で待つことに。一般の民宿や旅館では味わえない、こんなハプニング(?)も、農村民泊では魅力に感じられるから不思議だ。
まったく初めての土地での運動会。はじめは居心地の悪さを感じていたスタッフだが、小学校の校庭で一生懸命に走る子供たちの姿はどの地域でも共通のもの。次第に懐かしさが込み上げて、いつしか本当の親戚のように応援してしまう。
特に、前日の取材の合間にも一緒に遊んでいたまだ3歳にもならない末っ子のお孫さんとは、かなり打ち解けていた。バスの時間が近付き、ミヤ子さんとスタッフが移動しようとすると、自分も付いていくという。
だが、それがスタッフとのお別れだということが、まだ小さな子供に分かるはずもない。バス停に到着し、スタッフだけが車を降りたとき、その意味をようやく理解したのだろう。顔を真っ赤にして泣き出してしまう。
連られて涙ぐむスタッフ。
泣き続けるお孫さんが見えなくなるまで手を振るスタッフに、バス停にいた地元の方が声を掛ける。「お母さんと離れて寂しいんでしょうね」――思いがけない言葉に驚きながらも、スタッフの心には「1回泊まれば、遠い親戚」という安心院町グリーンツーリズム研究会のキャッチフレーズが強烈に迫る。確かに、別れ際、思わず「また来るからね」と言ったのは、決して社交辞令ではなかった。

「1度泊まると遠い親戚、10回泊まると本当の親戚」というのが安心院グリーンツーリズム研究会のキャッチフレーズ。メンバーズカードの裏にはスタンプを押す欄が10個ある。表のイラストには安心院町の名産であるぶどうとワイン、農業の象徴としての麦わら帽子が組み合わされて描かれている

中山さん夫妻のお孫さんと、編集スタッフ。親子に見えるらしい…?
今回、スタッフは初めての宿泊だったが、中山さんのお宅に何度も訪れている人の中には、結婚の報告をしに来るカップルもいるという。「今年(2007年)は、2組もいたんよ」とミヤ子さんは嬉しそうに語る。
ごく普通の家庭で、共に時間を過ごすなかで生まれる心の交流。だが、それも中山さん夫妻をはじめとする、安心院町グリーンツーリズム研究会のメンバーの思いがあってこそ。「安心院の資源は人」と宮田氏が言い切る理由を、ぜひ読者の皆さんにも体験してただきたい。

安心院で交わした心の交流は“親戚”という絆となり、この美しい風景を第二の故郷として心に刻み付ける
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