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ドイツ・アッカーレン村で見た
グリーンツーリズムの素晴らしさ

率先して安心院町のグリーンツーリズムを発展させてきた宮田氏だが、この町にやって来たのは実は1992年、22歳のときだ。国のパイロット事業で、隣町から安心院町へ、ぶどう農家として入植したのである。その費用として銀行から2000万円の借金。慣れない農業に精神的、経済的な負担が重なった。全く余裕がなく、「あのころは人に会いたくなかった」と宮田氏は述懐する。

本当は、実家の養鶏所を継ぐつもりだった。だから大学も獣医畜産関係に通った。ところが大学3年生のとき、親から「養鶏はもうだめだ。勤めに出ろ」と言われてしまう。そこにちょうど、入植の話が来たのだった。

宮田氏が経営する直売所にて。原材料は巨峰のみ、保存料は一切使用していないという人気のジュースや、こだわりのジャム、ソフトクリームなどを紹介してくれた宮田氏。ワイナリーは同じ建物の2階にある

宮田氏が経営する直売所にて。原材料は巨峰のみ、保存料は一切使用していないという人気のジュースや、こだわりのジャム、ソフトクリームなどを紹介してくれた宮田氏。ワイナリーは同じ建物の2階にある

「力一杯、燃えられる仕事だったら何でもよかったんですよ。たまたま、ぶどうだっただけで……。でも、50歳を過ぎて振り返ってみると、『ぶどう、いいなぁ』『農業っていいなぁ』と思う。また人生をやり直せたとしても、ぶどうを選ぶと思いますね」(宮田氏)。

とはいえ、安心院町のグリーンツーリズムが軌道に乗るまでには、様々な苦労があった。最初に始めたアグリツーリズムでは失敗もした。それでも諦めずに続けてきた理由はどこにあったのだろう。

「グリーンツーリズム研究会を立ち上げた年の11月、ドイツに視察に行きました。それで目標が見えたんです。そのころ、日本にはどこにも目標になるようなところはありませんでした。ドイツに行ったから頑張れたんです」(宮田氏)。

宮田氏が訪れたのは、ドイツのホークトヴルグ市内にあるアッカーレン村だ。人口5600人という小さな市の中で、さらに7つに分かれている村の1つだ。ここでは、グリーンツーリズムによる売り上げが年間約32億円にも上るという。

当時、「村の中でどのくらいの人がグリーンツーリズムにかかわっているんですか?」と質問した宮田氏に、市長は怪訝そうな顔をしたという。そして呆れたように「全員ですよ」と答えた。「なぜそんな質問をするのか分からない、という表情でしたね」(宮田氏)。

アッカーレン村では、民宿の宿泊料による売り上げは全体の約3分の1。残りの3分の2は農産物直売所や農家レストラン、様々な加工品の売り上げだ。

宮田氏はアッカーレン村を視察して実感したのは、「宿泊客が村で長期間、余暇を過ごすことで地域の産業全体が回る仕組みが出来ているんです。だからグリーンツーリズムの従業率が100%というのは当たり前のことだったんです」。

グリーンツーリズムによって、1つの農村が経済基盤を築いている――その感動と衝撃が、宮田氏の原動力になった。試しにドイツ語の辞書を調べたら『過疎』という言葉もなかったという。

「アッカーレン村には、ごみ1つ落ちていないんですよ。気になったので、わざわざごみを探して歩いたけど、やっぱり見付からない(笑)。本当に美しい町です。あまりにきれいだから、捨てる気にもならないんでしょうね。あの姿が安心院の目標です」(宮田氏)。

それから10年。安心院町グリーンツーリズム研究会のメンバーは毎年、順番にアッカーレン村へ研修に行っている。あえて補助金は受けず、自分たちでお金を積み立てる。「自分たちのお金だから意味があるし、本当の意味での勉強になります」(宮田氏)というのがその理由だ。

宮田氏の経営する販売所の様子。2町7反(2万7000㎡弱)あるぶどう畑はすべて巨峰で、加工品の製造から販売まですべて自分の農園で行っている。安心院町でぶどう農家を始めて35年。1度は家を出た2人の息子も戻ってきて家業を手伝っている。現在は、家族4人で暮らしている。

宮田氏の経営する販売所の様子。2町7反(2万7000㎡弱)あるぶどう畑はすべて巨峰で、加工品の製造から販売まですべて自分の農園で行っている。安心院町でぶどう農家を始めて35年。1度は家を出た2人の息子も戻ってきて家業を手伝っている。現在は、家族4人で暮らしている。

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