ムラが元気になることは
自然を守ることでもある
元々、マチというのは全てにおいてスピードが速い。広まるときは急速に広まっていく。最近ではむしろ、「ムラの方が追い付いていない」と養父氏は感じている。
「最初はじわじわと、と考えていたんですが、それでは間に合わなくなってきてしまいました。受け入れ側の体制づくりを早めないといけないんです。それには意識の高いマチの人と交流するのが、乱暴だけど1番早いということが分かってきました。例えば安心院のおばちゃんたちは皆、普通のおばちゃんなんだけど、話すと『すごい』と思うことがたくさんあります。実は、そう変えたのはマチの人なんですよ」(養父氏)。
農泊を始める前は、見ず知らずの人を自宅に泊めること抵抗を感じていた人も、いつしか「わざわざムラに来る人に悪い人はいない」と笑い飛ばすようになっている。実際、ムラに来る人たちや意識が高く、学者や社長、役員といった肩書きを持つ人も多い。
「今のところいい感じで進んでいるなと思います。だからこそ、意識はあるけれど行動にまで移していないマチの50%の人たち(前編参照)の意識を上げていく方が早いと考えています」(養父氏)。
養父氏がムラを活性化するうえで目指しているのは、地域の“第6次産業化”だ。農産物を作り(第1次産業)、それを元に加工食品(第2次産業)を作る。そして農家レストランや農家民宿というサービス業(第3次産業)へ。産業の“1×2×3”がうまく成立すれば、地域全体で“6”――すなわち“第6次産業”になる。そのためには「マチの人が何回もリピートしてくれることが重要です。1年に1回大人数で来るよりも、少人数でも1年に何回も来てもらう方がいいですね」(養父氏)。

株式会社マインドシェア
『九州のムラへ行こう』編集長
養父 信夫 氏
ムラが元気になることは、実は自然を守ることでもあるのだ。ムラに住んでいる人は、自然に近い。農業や林業、漁業といった第1次産業は、自然と一体でなければやっていけない。だからこそ、自然のことをよく知っている。
また、よくいわれるように日本の自然は手付かずのものではなく、人の手が入っている地域がほとんどだ。里山や田んぼが、しっかり手入れされていくことで、そこにすむ動植物の多様性が守られている。
「第1次産業に携わる人々が守っている自然があります。けれど、それにはマチの人の理解や、買い支える消費者がいないと壊れてしまうものなんです。単純な図式だけれど、それを形にしていくのは意外に難しいですね。僕が編集長を務めている雑誌『九州のムラへ行こう』では、“ムラの生命(いのち)をマチの暮らしに、マチの活力(ちから)をムラの生業(なりわい)に”というテーマを掲げているんですが、これは僕自身のテーマでもあります」(養父氏)。
ムラとマチをつなげ、自然と共生する人間を育むグリーンツーリズムは、言い換えれば「人と自然をつなぐ」ものだ。その架け橋となるべく、養父氏は今日も九州を縦横無尽に駆けめぐっている。

大分県安心院町の農村風景。この豊かな自然を守るためにも、ムラとマチの連携が必要である
最新号では宮崎県知事 東国原英夫氏と編集長 養父信夫氏の特別対談が巻頭を飾る。特集「ムラたび(同誌ではグリーンツーリズムをこう呼ぶ)のススメ」では福岡県星野村、宮崎県綾町の魅力を取り上げる。その他、究極のムラの弁当“ムラ弁”からムラごはん、宿、遊び……と地域に密着した取材内容が満載。詳細はこちら。
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