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自然と共生する人間を育むグリーンツーリズム
ムラとマチがつながった先にあるもの

これまでは大量生産・大量消費という時代の中で、農産物も効率的に生産するために大量に農薬を使い、形を整え、袋詰めし、協同出荷してきた。それ自体は悪いことではない。戦後のモノが本当になかった時代から脱却して日本全体が成長していくためには、そうした方法をとる必要があった。

いわゆる高度経済成長を目指していった流れのなかで、元々は自然の産物であるはずの農産物が工業製品のように扱われていることに、都市部に住む多くの消費者は疑問を持たなかった。スーパーなどの店に行けば、1年中、同じ製品が手に入るという利便性や、価格の安さを求めた。

そのひずみが今、例えば食品や産地などの偽装の形で顕在化し、大きな問題となっているのではないだろうか。

ポイントは、そうした問題は一朝一夕には解決できないという現実を認識することだ。経済成長で50年かかって生じたひずみや問題は、解決にもそれなりの時間がかかる。大切なのは、例えば「この野菜はどこでどのように生産されているのだろう?」「どのようなルートで自分たちの食卓まで来ているんだろう?」等々、疑問や思いをめぐらせることである。

マチで暮らす人たちが単に消費するのではなく、生産者としてのムラを考え、比較的簡単にできるところからで構わないのでムラに行ってみる。ムラも、マチで生活する人たちにきちんとした情報を伝えていくなど努力をする。養父氏が強調するように、「ムラとマチが上手に交流して、お互いが体験し理解していく」ことが、現在起きているひずみや問題の解消につながっていく。

株式会社マインドシェア
『九州のムラへ行こう』編集長
養父 信夫 氏

最近、どんな問題に対しても「想像力や仮説が大切だ」ということがいわれる。しかし養父氏は、「“想像力”や“仮説”以前の問題として、“体験”が欠けているのです。これだけムラとマチが物理的に距離があると、お互いの考えだけで進めていくのはかなり難しいでしょう」と言う。

例えば、安全な野菜といっても、「農薬は絶対使わない」というのは極端な理屈であり、実情に合っていない。日本のような高温多湿な国で除草剤を1回もまかずに農業に取り組むと、それこそ死ぬような思いをしなければ農作物は出来ない。それよりも、除草剤を1回、2回まいたくらいでは質の落ちない、良い水田や畑(つまり土壌)をつくり、上手にメンテナンスしていくことが重要だったりする。

「農薬は全部ダメというのは、マチの人の勝手な言い分で、現実にはそぐわないんですよ。結局、頭の中で考えることは、その域を出ないんです。一番怖いのは、想像力だけでやっていくと“安心・安全”どころか、“エゴ”にいつの間にか化けてしまうことです」(養父氏)。

野菜は多少、形が不ぞろいだったり、傷付いたりしていても、味に変わりはない。その当たり前のことを受け入れ、それよりも新鮮で安全なものをマチの消費者が求めれば、ムラでは“規格外品”として廃棄される野菜などはなくなる。袋詰めよりバラ売りが増えれば、家庭での無駄もなくなるだろう。そうした動きは、最終的にはエコにもつながっていく。

「グリーンツーリズムは、“自然と共生する人間”を育むものなんです。でも、そういう価値観は実際に体験しないと分からない。僕は小さいころ漁村、農村で大自然の中を駆け回って育ちました。その感覚でいうと、人間は自然の一部なんですよ。それが今、マチの人たちは自然から分断されて、どこに向かっているのか分からない……そういう危機感から、グリーンツーリズムに取り組んできました」(養父氏)。

“自然と共生する人間を育む”というグリーンツーリズムは、様々な可能性を秘めている。後編では、養父氏がグリーンツーリズムに取り組むようになったきっかけと共に、今後の課題や展望を分かりやすく紹介する。

雑誌『九州のムラヘ行こう』リニューアル創刊vol.2(通巻21号)

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最新号では宮崎県知事 東国原英夫氏と編集長 養父信夫氏の特別対談が巻頭を飾る。特集「ムラたび(同誌ではグリーンツーリズムをこう呼ぶ)のススメ」では福岡県星野村、宮崎県綾町の魅力を取り上げる。その他、究極のムラの弁当“ムラ弁”からムラごはん、宿、遊び……と地域に密着した取材内容が満載。詳細はこちら




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(後編に続く)

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