日本一の動物園を悩ませた
トイレ問題
バイオトイレはこのように、水を使うことなく排泄物を処理できることから、上下水道が整備されていない地点で普及が進んでいる。
そのひとつが、同社のすぐ近くにある旭山動物園だ。ここには現在、バイオトイレが33台設置されており、年間来場者300万人を誇る日本一の動物園のトイレ事情を支えている。
旭川市の下水道普及率は95%に達するが、実は旭山の中腹にある動物園までは下水道が通っておらず、水洗トイレを設置することができない。そのため、かつては汲み取り式トイレが5カ所に置いてあるだけだった。
しかし、1990年代末ころから始めたユニークな展示方法が話題を集め、入場者数が右肩上がりで増え続けるようになると、トイレの増設が課題となった。最初に考えられたのは汲み取り式トイレの増設だが、タンクを地中に埋めるための大掛かりな工事が必要な上に、設置後は汲み取りとにおいの問題に悩まされることになる。
一方、バイオトイレは高さ1mほどのタンクと付帯設備を地面に固定するだけでよいので、面倒な基礎工事は不要だ。もちろん、においの心配もないし、排泄物を汲み取る必要もない。しかも、「水を使わないので、気温が低くても使用できるんです。今や旭山動物園の名物となった冬期営業でも、バイオトイレが活躍しています」と、橘井氏は製品への自信を覗かせる。
旭山動物園以外では、富士山や大雪山などの登山口、旭川市冬まつりなどのイベント会場、道内外の公園や観光地でも導入実績があり、累計販売台数は1600台以上に上る。いずれも水洗トイレを設置できない場所で、バイオトイレの性能は高く評価されている。

ログハウスタイプのバイオトイレ。従来の仮設トイレと異なり、周囲の景観と違和感なく溶け込むデザインになっている。
社団法人日本下水道協会によれは、2006年3月末時点での下水道普及率は全国で69.3%、政令指定都市に限れば97.6%に達する。下水道が整備された地域ではトイレの水洗化が建築基準法によって規定されていることから、この普及率は水洗トイレの普及率とほぼイコールと考えていい。

正和電工株式会社
代表取締役 橘井 敏弘 氏
水洗トイレは排泄物を流すための上水道と、その汚水を処理するための下水道と処理施設が完備されて初めて、使用可能なものだが、普段ごく当たり前に水洗トイレを使っていると、そのことを忘れそうになる。「排泄物は水で流すもの」「水はレバーを倒せばいつでも出てくる」「排泄物は水と共に流れて“どこかに”消えてしまう」――そんな感覚に陥ってはいないだろうか。
何らかの事情で上下水道が機能しなくなると、当然のことながら、水洗トイレは使えなくなる。今もっとも危惧されるのは、地震などの災害の後だ。被災地では必ずといっていいほど、トイレの問題が起きている。
「普段我々は水があって当たり前と思っていますが、大地震が起きればそうはいきません。水道が復旧するまで、水洗トイレは使えないんです」(橘井氏)。
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