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排泄物の水分を蒸発させて
微生物が固形分を分解

おがくずが排泄物を分解するといわれても、なかなかイメージが沸かないかもしれない。橘井氏も「おがくずだけで処理できるといっても、最初はみんな信じない」と苦笑する。それでは、バイオトイレのメカニズムとはどのようなものなのか。

バイオトイレの構造そのものは、汲み取り式トイレと似ている。汲み取り式の場合は便器の下に空のタンクを設置するが、バイオトイレはタンクの中におがくずを入れておく点が異なる。同じような構造ながら汲み取り式のような悪臭を発しないのは「おがくずが水分を吸収してくれるのと、おがくずに消臭効果があるから」(橘井氏)だと言う。

尿は、便ほどにおいもきつくないし、液体なので、おがくずに吸収されるのもなんとなく想像できる。事実、尿の約98%は水分だ。ところが、なんと便も95%近くが水分なのだそうだ。個人差や季節による違いはあるが、人体も約6割が水分である。見た目が固体でも、水分含有量が多いものは自然界にごく当たり前に存在している。

正和電工本社に設置されたバイオトイレ。

正和電工本社に設置されたバイオトイレ。水洗トイレであれば水が溜まっているところに、おがくずが入っている。バイオトイレは排泄物以外にも、トイレットペーパーやティッシュペーパーなどの水に溶ける紙類、食べ残した食品や茶殻なども処理することができる。

バイオトイレのタンクにはスクリューが取り付けられており、排泄物はその回転によっておがくずと攪拌される。これによって便はおがくずに包み込まれ、悪臭を発することなく、水分がどんどん吸収されていく。

タンクの内部はヒーターで55℃前後に温められているので、おがくずが吸収した水分は徐々に蒸発する。スクリューの回転も、水分を効率よく蒸発させるのに一役買っているという。

そして、元の排泄物の10%にも満たない固形分は微生物が分解してくれる。バイオトイレの場合は生ごみ処理用のコンポストのように特別な菌類は必要なく、人間の腸内細菌と自然界に生息する微生物だけで十分だ。丸1日もあれば、排泄物のほとんどは水分と二酸化炭素に分解され、蒸発・拡散するため、排泄物は跡形もなく消えてしまう。

バイオトイレが処理できるのは排泄物だけではない。トイレットペーパーなどの水に溶ける紙類、食べ残した食品、茶殻なども処理することができる。通常、水洗トイレでは使用できないティッシュペーパーもバイオトイレなら使用可能だ。ただし、生理用品やおむつに使われている不織布、ビニール類は分解されない。これらがおがくずに混入した場合は手で取り除くことになる。

排泄物や食品などに、わずかに含まれる窒素やリン酸、カリウムといった無機成分もおがくずに残る。無機成分が不織布やビニール類と違うのは、微細に分解されて、おがくずに吸着されるという点だ。そのため、使用回数を重ねたおがくずは木材のベージュ色から、土のような茶色に変化する。

「おがくずに残った成分は栄養塩、簡単に言えば肥料ですよ。おがくずは土に返りますから、バイオトイレで使用した後のおがくずは栄養たっぷりの肥料になるというわけ」(橘井氏)。

肥料として使うとなれば、気になるのは衛生面だ。しかし、橘井氏は毎日会社で使っているバイオトイレのおがくずを手に乗せながら「55℃で加熱すると、大腸菌類は死滅します。使用済みのおがくずは、普通の土と比べても衛生的なくらいなんですよ」と説明してくれた。

タンク内のおがくずはほんのりと温かく、鼻を近づけてもトイレを想起させるにおいは一切しない。こうして使い込んだおがくずは、トイレの使用頻度にもよるが、平均して1年間に2、3回交換すればいいという。4人家族がごく平均的に使用した場合、必要なおがくずは1年間で0.5~0.75m³程度となる。

橘井社長が手に乗せているのは同社で使っているバイオトイレのおがくずだ。これが栄養満点の肥料になる。

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