上下水道を一切必要としない
バイオトイレってなに?
日本のトイレ事情は諸外国と比べて先進的だという。確かに公共の場でも、終始適温を維持する暖房便座や、温水が出るウォシュレット、女子トイレ用の擬音装置などが完備されているケースは珍しくない。最近では、便座のふたを開けるところから洗浄まで全自動のトイレが開発され、デパートやホテル、オフィスビルなどで設置が進んでいる。
日本人の衛生観念の高さを象徴する紙製便座シートや消臭スプレー、便器用抗菌剤といった消耗品も、多種多様なタイプが開発されてきた。あの狭い空間には、ありとあらゆる知恵が盛り込まれているといっても過言ではないだろう。
しかし、トイレの基本機能である“排泄物の処理”に関してはどうだろうか。
古くは、農地の一角などに排泄物を溜めておき、肥料として使って自然界に返していた。川や海などに排泄物を流すことも、ごく当たり前に行われていた。やがて、地中に埋めたタンクに排泄物を溜めておき、バキュームカーが回収する汲み取り式トイレが主流になる。戦後は上下水道と下水処理場の整備が進み、猛烈な勢いで水洗トイレが普及した。
一見すると排泄物の処理方法は進化しているようだが、実は排泄物を1カ所に溜めてから捨てるか、大量の水で流してしまうか、いずれかの方式しかない。トイレ空間の快適性のために多種多様な機器類や消耗品が開発されてきたのに比べて、“排泄物をどう片付けるのか”という基本機能面では、ドラスティックな変革がなかったといってもいいのではないだろうか。

正和電工株式会社 代表取締役 橘井 敏弘 氏
北海道旭川市に本社を構える正和電工が開発した「バイオトイレ」は、その意味で、まったく新しい発想のトイレだ。見た目は既存のトイレと同じだが、便器の下に据えられたタンクにはおがくずが入っている。排泄物はその都度、おがくずによって分解・処理されるため、汲み取ったり、水で流したりする必要がない。
正和電工株式会社の代表取締役、橘井敏弘氏は言う。
「おがくずを使って、排泄物を処理することは昔からやっていたんですよ。工事現場でよく見かける簡易トイレなんてない時代には、大工さんは木材を加工して生じたおがくずを集めて、トイレ代わりにしていた。それだとにおいもしないし、使用済みのおがくずを土に埋めれば格好の肥料になるしね。先人の知恵ですよ」。
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