ライフスタイルの欧米化で
日本を知らない日本人が増加
山田氏は風呂敷の普及・啓蒙活動の一環として風呂敷講習会の講師を務め、こうした使い方をレクチャーしているが、特に解き方については、風呂敷を日常的に使っていたはずの50~60歳代の方でも知らない方が少なくないという。「さらにその上の世代の方々はご存知なのですが、戦後日本のライフスタイルが急速に欧米化していくなかで、だんだんと風呂敷が使われなくなっていきました。それに伴って、風呂敷にまつわる知恵や心使いも伝わらなくなっていったのではないでしょうか」と山田氏は現状を憂う。
ところが、最近は若い女性を中心に風呂敷の人気が高まっている。流行の背景のひとつは“エコ”だ。これは前環境大臣の小池百合子氏がエコバッグとして「もったいないふろしき」を考案し、推奨してきたことによる影響が大きい。
風呂敷は折りたためばハンカチ程度の大きさになることから、普段使っているバッグに忍ばせておくことができる。しかも、一般的なバッグと違って、対象物の量や形状を問わない。衣類でも書籍でも、丸いスイカでもワインのボトルでも、包み込む寛容さを風呂敷は持ち合わせている。弁護士や検事といった法曹界に従事する方々に風呂敷愛用者が多いのも、こうした柔軟さゆえのこと。
「法曹界の方々は持ち歩く資料の量の増減が1日の中でも激しく、“それに対応できるのは風呂敷しかない。カバンの方が不便”とのこと。カバンは量が多いと入りきらないことがあるし、量が少なければカバンそのものが邪魔になります。カバンが不便という視点には私も衝撃を受けました」(山田氏)。
もうひとつ、風呂敷の流行を後押ししているのが「和ブーム」だ。山田氏は昨今のトレンドをこのように捉えている。
「ライフスタイルの変化に伴って、日本にいながらにして日本文化に触れることなく育った方たちが増えてきました。欧米化一辺倒でよかった時代もあったのでしょうが、最近は日本古来の文化に触れることで癒やされたりホッとしたりして、そこに自分たちのDNAやアイデンティティがあることを、若い人たちのほうが気付き始めた……。それが“和ブーム”に繋がっているんだと思います」。
何十万円もする高価な欧米ブランド物のバッグが飛ぶように売れる現代、とある老舗ブランドでは日本市場のシェアが4割を占めているというのは有名な話だ。その一方で、周囲と同じバッグを持つことに違和感を覚え、日本文化に“自分らしさ”を見出して、風呂敷を買い求める若者が増えている。
彼らは真結びどころか、風呂敷が過去にどう扱われてきたのかも知らない。それゆえに「古くさい」「面倒くさい」といったネガティブなイメージは持ち合わせておらず、むしろ風呂敷を新鮮なものとして受け止めている。デニムのパンツをはきながらちりめんの風呂敷をスカーフのようにまとうような使い方ができるのも、既成概念に捉われていないからであろう。
後編では、こうした現代流の風呂敷活用術をご紹介すると共に、日本の生活から消えかけた風呂敷の復権を目指す山田氏の活動についてリポートしたい。

風呂敷専門店「むす美」の内観。店内には伝統的な図柄のものはもちろん、「これが風呂敷?」と思うような斬新なデザインのものまで、多種多様な風呂敷がそろっている
(後編はこちらからどうぞ)
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