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評価を実施する際には、事業地である「その場」の公益機能が前と同じように機能しているか?といった「自立性」と、周辺の「他所」に対してどうか?という「調和性」の両面から評価することが重要となる。元の場所が変質したことで、連鎖的に周辺の生態系が悪影響を受けるのなら、それも含めて対応しなくてはミティゲーションが成功したことにはならないからだ。水も空気も生物も、本質的には移動する性質を持つ。ゆえに、そのつながりを評価しない事業地内だけの調査では不足と言える。

公平性と公正性を確保するためには、「その場」と「他所」との関係性も含めて評価することが必須で。「その場」の評価だけでは不足だと理解したい。周囲のどこまでを調査範囲に含めるかは、ケースバイケースである。それでも、隣接したビオトープに対する影響ぐらいは評価することが不可欠だろう。

4. 精神論に片寄らない評価を

代償ミティゲーションとしてビオトープを造成したとしよう。そこに、さまざまな生き物が棲むようになる。子どもたちも喜び、コミュニティーも活性化してきた。水質浄化能力や、生物の生息機能など、以前と同じような生態系の機能も再生できているようだ。

ところが困ったことが起こった。トンボなどの生き物が増えたことまでは良かったのだが、蚊などの不快生物も同時に増えてしまった。これらが周辺に出ていって、住民の不満が大きくなった。このような場合、「少々のことは我慢して」や「不快生物も大切な生態系の構成要因だ」などの論で、賛成者が反対者を説得する場面に出くわす。しかし、ミティゲーションの観点からは、反対者の主張が正しい。

元の環境では起きていなかった問題の発生は、生態系の機能が以前と同じ程度にまでは回復していないことを意味する。ミティゲーションが達成できたとは言えない。であるにもかかわらず、賛成者が「生き物を大切にすることは大事」などの精神論を根拠に反対者に詰め寄ることは、お門違いである。まずはミティゲーションを達成するまでの猶予期間について議論し、その上で、改善方法を探っていく必要がある。

中島 敦司(なかじま・あつし)

地球温暖化問題や、植物生理、森林生態学などをテーマにする気鋭の研究者。「温暖化が植物に与える影響」の証拠データや写真などを多数保 有。2003年、本コラムにも登場した長谷川明子氏らと「ビオトープ―環境復元と自然再生を成功させる101ガイド(誠文堂新光社)」を共著し、自然再生 の分野でも独自の理論を展開。ネット会議「近自然の広場」のオーナーも務める。和歌山大学システム工学部。

中島氏のホームページ

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