照明界の風雲児となるか?
着実に進む製品化への道
――蛍光灯の時代が終わる…。それは驚かされる話ですが、では蛍光灯と同じく注目を集めているLEDと比べるとどうでしょうか? LEDも次世代の照明といわれていますが。
城戸: LEDと有機ELの大きな違いは、LEDがスポットライトのような指向性の高い光であるのに対して、有機ELは広い範囲で均一な明るさを得ることができる点です。
LEDの光は特有のギラギラした感じがしますね。あれは店舗などには向いていると思いますが、落ち着いた雰囲気が欲しい家庭にはあまり馴染まないでしょう。私はLED照明が家庭の主照明にはならないと考えています。また、例えばLEDで8畳程度の部屋を明るくしようとすると、かなりの数が必要になりますし、それにともなう“熱”の問題も出てきます。
――ちなみに有機ELの照明は、LEDみたいに自由に色を付けられるのですか。
城戸: 当初、有機ELは青、緑、赤などの様々な色を発生することができても、なかなか「白色」を出せませんでした。通常、光の3原色である「RGB(Red:赤、Green:緑、Blue:青)」を混ぜると「白」になると考えられていますが、有機ELの世界では、「RGBを混ぜても白にならない」というのが常識だったのです。
しかし、1993年に私の研究室において、世界で初めて白色を出すことに成功しました。さらに白色には色々な色が含まれていますから、現在はどんな色でも作れるようになりました。昼光色とか電球色といった電球型蛍光灯のような色はもちろん簡単につくれますし、その他、全く自由に色をつけることが可能です。
――話をうかがっていると有機ELの照明は良いことづくめのようですが、実際に世に出てくるのはいつ頃になりますか。製品化のメドはついているのでしょうか。
城戸: 今年(2008年)5月に、三菱重工業、ローム、凸版印刷、三井物産、それに私も出資しまして、照明用の有機ELパネルの製造を行う会社「ルミオテック」を設立しました。今、有機EL用の照明器具の開発や、製造工程も含めて開発をしているところで、来秋には製品を発売できると思います。
現在、日本の照明業界というのは2大メーカーの寡占状態です。それでは新しい産業は生まれてこない。私はそうした状態に風穴を空けたいという気持ちもあって、有機EL照明の会社を立ち上げることにしたのです。
――値段はどのくらいになる予定ですか。
城戸: 当初の値段は、たぶん蛍光灯の10倍くらいの値段になるでしょう。しかし、数年後には値段を10分の1程度まで下げて、広く普及させたい考えです。シャープの液晶テレビだって、当初は15インチで17万円ぐらいしていましたが、今では同じ17万円出せば、37インチ程度のものが買えるようになりました。そんな風に量産することで、どんどん値段は下がっていくと思っています。有機EL照明の場合は、最初は公共のスペースで使用されて、だんだん家庭に普及するというシナリオになると思います。

有機EL発光パネルを用いた、有機EL照明商品の試作例(写真提供:有機エレクトロニクス研究所)
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