このページの本文へ
ここから本文です

日本人なら、一生に一度はお伊勢参り

――江戸時代、お伊勢参りで神宮に参拝した人の数はきわめて多いですよね。資料によると、日本で5人に1人はお伊勢参りをしたことになりますが、なぜそこまでブームになったんでしょう?

井沢:  伊勢神宮には当時、御師(おんし)といういわゆる布教師がいました。基本的には全国の町民や農村に神宮のお札を配って、どうしても行けない人のために地方を回って持っていく。その他にも伊勢暦という現在のカレンダーを配るといった、いわゆる神宮への祈祷や奉納寄進の“取次ぎ”をしていたのです。

彼らが布教して信仰を広めながら、一方でトラベルコーディネーターの役割も担っていた。各地を回りながら、「たまには神宮に、伊勢に行ってみませんか」と伊勢参拝を薦める。場合によっては、参拝者の宿泊や案内の世話までするわけです。

しかし数多くいた御師も、明治以降には神宮改革(※3:編集部注)でいなくなってしまう。それまでは彼らが伊勢神宮を宣伝するのに大きな役割を果たしていた思います。例えば「伊勢神宮があるから行ってみないか」、とか「普段は伊勢神宮というけど、本当は神宮というのが正式名称なんだよ」、と教えたりしてね。伊勢参拝を勧誘することもやっていたわけです。宣伝と布教は紙一重ですから。


※3 明治4年(1871年)に行われた、神職での世襲制、御師制などを廃止した改革。当時で伊勢の全戸籍の半分以上が一度に失業者になったといわれる。


――最後に、井沢先生が「ここは是非見ておくべきだ」という個人的なお薦めスポットがあったら教えてください。

井沢:  そうですね、やはり森と、川と建物のバランスをぜひ見てほしい。神道の基本教義は「清らかさ」ですから。

特に、川がものすごく澄んでいてきれいなんですよ。五十鈴川なんてまさに清流の原点のようですね。普通は手水舎で手を洗うのが基本ですが、伊勢神宮では五十鈴川で手を洗って清める。ちょうど川べりが石段のようになっていて、近くまで降りていけるようになっています。神宮、それも内宮ですが、行かれる方はぜひ五十鈴川で禊をしてみてください。

平成25年に第62回式年遷宮を迎える伊勢神宮に流れる五十鈴川

平成25年に第62回式年遷宮を迎える伊勢神宮に流れる五十鈴川

井沢:  また最近のものですと、「おかげ横丁」があります。かつての伊勢が最も栄えていた頃の門前町が再現されていて、その中に当時のおかげ参りの様子を再現した「おかげ座」という博物館があります。それは一見の価値があると思いますよ。


――どうもありがとうございました。

伊勢が最も賑わった江戸後期から明治初期の町並みを再現した「おかげ横丁」

伊勢が最も賑わった江戸後期から明治初期の町並みを再現した「おかげ横丁」。内宮宇治橋の手前にあり、代表的な建築物が移築・再現されている。井沢氏の紹介しているのは今から役300年前のおかげ参りの様子を再現した「おかげ座」という資料館である


(前編はこちら)

井沢元彦(いざわ・もとひこ)氏

経歴

歴史推理・ノンフィクション作家。
1954年2月1日、名古屋市生まれ。早稲田大学法学部卒。
TBS入社後、報道局(政治部)記者時代に『猿丸幻視行』にて第26回江戸川乱歩賞を受賞(26歳)。31歳で退社し、以後作家活動に専念。歴史推理・ノンフィクションに独自の世界を開拓し、週刊ポスト連載の「逆説の日本史」は700回を超えてなお回を重ねている。

主な著書としては、『言霊』『穢れと茶碗』『隠された帝』『天皇になろうとした将軍』『逆説の日本史』(古代編黎明から戦国乱世編まで既刊)『世界の「宗教と戦争」講座』『銀魔伝』『黎明の反逆者』『魔鏡の女王』『恨の法廷』などがある。

一方、NHK『歴史発見』、日本テレビ系『ウェークアップ』、TBS系『ここがヘンだよ日本人』などにレギュラー出演したほか、積極的に講演活動を行っている。
現在、連載中の紙誌は『週刊ポスト』『SAPIO』『旅行読売』など。 BSフジ番組審議会委員。

ホームページアドレス
http://www.gyakusetsu-j.com/


ここから下は、過去記事一覧などです。画面先頭に戻る バックナンバー一覧へ戻る ホームページへ戻る

記事検索 オプション

SPECIAL

日経BP社の書籍購入や雑誌の定期購読は、便利な日経BP書店で。オンラインで24時間承っています。

ご案内 nikkei BPnetでは、Internet Explorer 6以降、 Safari 2以降、Opera 8以降、Netscape 8.1以降またはHTML 4.01/CSS level 1, 2をサポートしたWebブラウザでの閲覧をお勧めしております。このメッセージが表示されているサポート外のブラウザをご利用の方も、できる限り本文を読めるように配慮していますが、表示される画面デザインや動作が異なったり、画面が乱れたりする場合があります。あらかじめご了承ください。

本文へ戻る