伊勢神宮に学ぶ環境問題へのヒント
――それが今の環境問題をはじめ、エネルギーや人口増加、食料供給など色々な方面に絡んできますが、伊勢神宮の取り組んできたことはそういった環境問題に対して、何かヒントを与えてくれるような気がするのですが……。
井沢: 伊勢神宮は新しい技術を無理に取り入れるのではなく、人間が昔の範囲でやっていたことをそのまま継承しています。
例えば明治時代に入って、時の政府が次のようなことを考えた。「式年遷宮を続けていくと、神宮だけではなく、富国強兵を目指そうとする日本には檜が将来不足するだろうから、神宮が行ってきた掘立造りをやめて(西洋から入ってきた)コンクリートの技術で頑強な土台を作ればいい。そうすれば長期間保つ。20年ごとに遷宮をする必要はなく、その間に用材を育てればいい」――このような内容を天皇に進言したんですね。
新しい技術を取り入れれば、20年間ではなく、100年は保つ社殿になるからというわけですね。しかし明治天皇はそれを断るんです。そしてその姿勢が先ほどの200年計画に受け継がれて行くんですね。
――新しい技術を取り入れず、昔の技術を継承するわけですね。
井沢: 伊勢神宮のやっていることは、原始時代に比べたら進んだ技術ですが、ある程度のところまで達したらこれ以上手を加えないのは、やはり見識の一つだと思います。 むしろ人間の一つの一生の中でできることを繰り返していくのが人類の文明というものですから。そのサイクルを上手く保っていくのが大切ですし、そのためには20年という月日が重要です。
そうした式年遷宮の取組の中からで我々が学ぶとしたら、例えば何か色々なことをやっていく場合、いま我々の世代が準備したことが、次の世代、さらに後の世代までいかないと利用できないのだということを知ることですね。そして先代の行ってきたことを無駄にせず、きちんと利用することだと思います。

作家 井沢 元彦 氏
井沢元彦(いざわ・もとひこ)氏
経歴
1954年2月1日、名古屋市生まれ。早稲田大学法学部卒。
TBS入社後、報道局(政治部)記者時代に『猿丸幻視行』にて第26回江戸川乱歩賞を受賞(26歳)。31歳で退社し、以後作家活動に専念。歴史推理・ノンフィクションに独自の世界を開拓し、週刊ポスト連載の「逆説の日本史」は700回を超えてなお回を重ねている。
主な著書としては、『言霊』『穢れと茶碗』『隠された帝』『天皇になろうとした将軍』『逆説の日本史』(古代編黎明から戦国乱世編まで既刊)『世界の「宗教と戦争」講座』『銀魔伝』『黎明の反逆者』『魔鏡の女王』『恨の法廷』などがある。
一方、NHK『歴史発見』、日本テレビ系『ウェークアップ』、TBS系『ここがヘンだよ日本人』などにレギュラー出演したほか、積極的に講演活動を行っている。
現在、連載中の紙誌は『週刊ポスト』『SAPIO』『旅行読売』など。 BSフジ番組審議会委員。
ホームページアドレス
http://www.gyakusetsu-j.com/
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