道路は計画10年、建設10年、使用50年
――道路の必要性を通行量や人口から論ずるのがそぐわないのであれば、どういう視点で見ればいいのでしょうか。
家田: こちらの図を見てください。

図版提供:家田仁教授(出典:『道路』2005年3月号)
家田: この図は縦軸に国民1人あたりの路線延長を、横軸に人口密度をとって、各国の状況を示したものです。どういう視点で道路を作っていけばいいのか、4つの仮説が示されています。
道路は人口に比例すべきとするなら、すべてのプロットが「仮説1」のラインに乗ってくるはずですが、そうはなっていませんね。また、「仮説2」は面積に比例すべきというもので、これも今はあまり支持されていません。誰も使わないところに道路を作る必要はないですから。
一般に幹線道路整備の判断に活用されてきたのが「仮説3」です。道路を整備すると移動時間が低減されるので、それによる効果と整備に必要な費用を、費用対効果として考えるというものです。これは国土係数理論と呼ばれています。
「仮説4」は交流重視の仮説で、私が提示したものです。日本の人口はこれから減少していきますが、そうなると人口密度も減少し、交流に必要な時間が増加します。活力ある社会のためには一定程度の交流機会を維持する必要があり、それにはモビリティを高めなければなりません。仮説4は、こうした交流と道路建設のコストを、費用対効果の考え方で見ていこうというわけです。
さらに、時代によっても道路の必要性は変化します。戦前は朝鮮半島や中国との交易が盛んでしたから、日本海側に沿って高速道路を通す計画が進められました。
戦後は万事アメリカ中心で、太平洋側の交通網整備が優先されています。日本海側はすっかり置き去りにされ、今でも山陰や東北の日本海側には高速道路が貫通していません。しかし今や、中国を筆頭にアジアとの貿易はアメリカ以上です。鳥取県や島根県は人口が少ないからと言って、本当に高速道路の建設を見送っていいのでしょうか?
作る以上は今すぐ活用されるのが理想ですが、道路は計画に10年、建設に10年、使用に50年といわれています。トータル100年くらいの長期的なスパンで、考えていくべきだと思いますね。

東京大学 大学院工学系研究科 社会基盤学専攻 家田 仁教授
(5月23日掲載予定の後編に続く)
家田 仁(いえだ・ひとし)氏
略歴
78年、東京大学工学部土木工学科を卒業後、日本国有鉄道(現JR)入社。84年に東京大学の助手となる。その2年後に工学博士となり、東京大学助教授に就任する。
88~89年は西ドイツ航空宇宙研究所交通研究部・客員研究員に、93~94年はフィリピン大学交通研究センター・客員教授に、それぞれ派遣される。95年、東京大学教授に就任。2002~2004年に社会基盤学専攻長および社会基盤学科長を務める。
研究分野は交通・都市・国土に関わる諸計画と諸政策。昨今は東アジア圏の経済発展と国際交通政策や鉄道駅を中心にした都市の拠点開発、実践型のITS戦略なども研究課題としている。所属学会は土木学会、日本都市計画学会、日本交通学会、世界交通学会、アジア交通学会。
著書に「国土の未来 アジアの時代における国土整備プラン」(森地茂・国土の未来研究会編著、日本経済新聞社)、「都市再生 交通学からの解答」(岡並木 共編著、IATSS都市と交通研究グループ共著、学芸出版社)、「東京のインフラストラクチャー 巨大都市を支える」(東京大学社会基盤工学教室共著、技報堂出版)などがある。
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