人と人の交流を促すという役割
――表現していないのではなく、そういう視点がそもそも欠けているわけですね。道路作りそのものについてはどうでしょうか。個々の道路の必要性について十分かつ適切な議論がなされているのかどうか、そこに疑問を呈する人も少なくありません。
家田: 国民に対する説明が不十分なのは間違いないでしょう。「この道路が開通するとクルマが何台通過できる」とか「時速が何キロ速くなる」と説明されても、実際にそこをクルマで通行する人以外にはまったく実感が沸きません。国民の心に響かない説明だと言っていいかもしれない。
ただ、道路の必要性については、技術的には需要分析や費用便益分析といった手法がある程度確立されています。それによって国民的便益を測った上で計画が進められていますから、まったく必要ない道路ばかりが作られているわけではないと思います。
――それでは、これからどこまで道路を広げていく必要があるのでしょうか。せっかく道路を敷いたのに、1日の通行量が数えるほどというケースもあるようです。

東京大学 大学院工学系研究科 社会基盤学専攻 家田 仁教授
家田: それは極端な例でしょうが、通行量が少ない道路は往々にして人口の少ない場所にあります。しかし、通行量が少なければ、あるいは人口が少なければ、道路が必要ないかというと、そう単純な話ではありません。
日本は、7割の人が都市部に、残る3割が中山間地に住んでいます。団塊の世代くらいだと親類が農家という人は結構多いので、都市生活者でも中山間地の暮らしを知っています。一方、若い世代になると、親はもちろん、祖父母も会社員だったりして、都市生活しか知りません。そうなると中山間地への想像力が働かなくなりがちですね。
中山間地の道路は都市部の人が食べるニンジンを出荷するときに使われるかもしれないし、ニンジンを作ったおばあちゃんが病院に向かうときに使うかもしれない……。通行量が少ないから不要という意見は、行政がそういう心に響く説明をしていないから出てくるのだと思います。
誰も使わない道路なら、もちろん作る必要はありません。しかし、100人が使う道路と10人が使う道路を比べて、10倍の人間が使う道路の方が10倍重要だと考えるのは誤りです。人と人をつないで交流を生みだすことも、道路の役割なのですから。
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