悪い影響ばかりではないが
世界は確実に生きにくくなる
――これまでのお話しの中で、地球温暖化に伴うリスクとして研究対象となるものを幾つか上げていただきました。それらを聞いていると、やはり温暖化は、人間社会や自然環境に悪い影響を与えるということですね。
江守: そうですね、実はこれもバランスよく伝えたいと思っていて、中には良い影響もあります。例えば、温暖化して気温が上がると、暑すぎて亡くなる方は増えますが、逆に寒すぎて亡くなる方は減りますよね。
熱中症とか、凍死といった極端な話じゃなくても、何か疾患を持っていて、特別な暑さや寒さが死亡原因になる人がいます。そういうケースを数えて、気温と死亡率の関係式などを作って計算すると、「暑くて亡くなる人は増え、寒くて亡くなる人は減る」という結果が出てきます。
あるいは、温暖化によって、今まで寒かった地域にも農業の適地が増えるのではないかということもあります。最近は、北海道でもおいしいお米が取れるようになったと聞きますが、まあそれは、暖かくなったせいか、それとも品種改良などの技術面が発達したことが大きいのか、はっきりとは分かりませんけれど。
だから、全部が全部悪いことではないのです。しかし、これまでの研究などからつかんだ印象としては、やはり悪いことの方が多そうだな、と。そして、温暖化が進めば進むほど、悪いことの方が増えていくという感じです。
そもそも、今、比較的安定して続いている気候が変わってしまうこと自体、悪いことではないかと思われます。我々は、現在の気候の上に文明を築いているので、それが変われば、変わった状態に適応するためのコストがかかります。
ですから、現状より暖かくなるという変化も、寒くなるという変化も、良くはありません。また、たとえ変化した気候に適応できたとしても、絶対的に何か「生きづらい」ことが出てくると思いますね。

国立環境研究所 地球環境研究センター 温暖化リスク評価研究室長 江守 正多 氏
(5月20日掲載予定の後編に続く)
江守 正多(えもり・せいた)氏
略歴
東京大学教養学部卒業。同大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。
1997年より国立環境研究所に勤務。
2006年より国立環境研究所地球環境研究センター温暖化リスク評価研究室長。
海洋研究開発機構地球環境フロンティア研究センターグループリーダー
ならびに東京大学気候システム研究センター客員准教授を兼務。
専門は気象学、特にコンピュータ・シミュレーションによる地球温暖化の将来予測。
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